ドーラビーラー遺跡は、1967年に発見され、予備調査を経て約10年前から発掘が始まったが、インド考古局が長い間マスコミの取材を許可しなかったため、今までその姿を表に出すことはなかった。本書では、このドーラビーラーの遺跡を門や貯水槽、インダス文字の書かれた看板に至るまで細かく写真入りで紹介し、その謎に迫っている。ドーラビーラー以外にモヘンジョ・ダロ、ハラッパーも取り上げていて、優れた水道関連施設で知られるモヘンジョ・ダロに関しては、かなりのページを割き上下水道システムや当時の人々の生活について詳細な説明をしている。巻末の専門家による座談会は、文明の東西交流に貢献したインダスにふさわしく「交易」がトピック。四大文明の横のつながりを解明するという内容のため、シリーズ全巻で行われている座談会の中でも特に読みごたえがある。(土井英司)