決して古くならないカフェ情報
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十数年前に、新潮文庫版を持ってパリに行きましたが、
カフェの席によって値段が違うとか、注文の仕方やお金の払い方など、
まったく本の通りでした。
お金を支払うと、キャルソンがレシートにちょっと切れ目を入れて、
支払済みの目印にする。・・・
実際に店内のテーブル席で支払うとその通りだったので、
友人と「すごい、本の通りだ。」とびっくりしてしまいました。
何年たってもシステムが変わらない、パリという町のカフェがすごいのか、
玉村氏の描写力がすごいのか?
何十年立っても変わらないパリの町の姿がそこには、ありました。
今ではパリにも、ネットカフェがありますが、新しい物と古いものが、
きちんと並んで存在できるパリ、フランスのふところの広さを改めて感じました。
細かいことからパリが見える
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本書は30年も前の若き玉村氏が見てきたものを書きつづった、
パリの雑学である。
かつて新潮文庫で出版されていたものを復刊したわけだが、
やはり、それだけの価値はある。
出てくる物価は今と異なるし(通貨単位はフランである)、
最新の情報が25年も前のデータだったりするが、そんなことは問題ではない。
例えば「カフェ」について本書の半分以上、実に150ページも割いているが、
それはパリを知るにカフェがいかに重要な位置をしめるかということでもある。
読んでいけばカフェがパリの生活・文化の中心にあることが分かるし、
ルーブルやオルセーよりも通うべきところであるように思えてくる。
一見、役に立たないようなことが読者を引きつけてやまない、
やはり、これは一級のガイドブックであると言っておこう。
違うパリ
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1977年にダイヤモンド社から出た単行本の文庫化。
ひととは違った視線でパリをとらえた好著。パリを訪れる普通の日本人は、芸術、建築、フランス料理などに目を向けるだろう。しかし、玉村氏は舗道にはいつくばり、地下鉄の張り紙をじっくりと眺める。王道かな、と思われるカフェにしても、トイレの仕組みをメモしたりしていて、普通ではない。ところが、それが面白い。本当のフランスらしさ、パリジャン根性は、こういった細部にこそ潜んでいるものなのだ。パリの美しさにだけ目を向けていては発見できないものが、次々と明らかになる。
すでに30年近くも昔の本だが、ガイドブックや凡百の旅行記と違って、いまでも読む価値があるのは、著者の「普通でない眼」のおかげだろう。
新しさ
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書かれたのはもう随分前なので、情報としては古いのですが、パリの空気は変わりません。(いや、もうカフェでお金も払わずに何時間もいられるほど呑気ではなくなった気がする。)ともかく、パリと言えば未だグルメ、ファッショナブル等々のイメージが一人歩きしていますが、この本はパリでの生活がありのままに描かれています。それに何よりも作者の文章のうまさ、そしてさりげないユーモアに脱帽!
博物学的パリ論
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玉村の著作としては早い時期のもの。パリのカフェ、舗道、メトロを扱う。著者はありがちな一方的な思い入れからなるパリ論とは、まったくことなった新しいパリ理解を本書で提示している。著者はあそらくはフランス好きなのだろうが、その眼はあくまで冷静だ。とくにカフェ、バー、レストランなどの分類は興味深く、著者の分類方法はほとんど構造(主義)的といってよいほどだ。評者はこのような著者の分類で、はじめて、これらの類似の食いもの屋や飲み屋の区別を明確に知ることができた。『パリ 旅の雑学ノート 2冊目』もお薦め。