体調不良でも得意の嗅覚で必死に頑張る黒ラブ名探偵ランドルフ・シリーズ第2弾です
★★★★☆
ラブラドール・レトリーバーが探偵を務め人間の飼い主がワトスン役という惚けた味わいの黒ラブ名探偵ランドルフ・シリーズ待望の第2弾です。このシリーズは一話完結ですが、ランドルフの元ご主人で今の飼い主ハリーの恋人イモージェンを巡る大きな陰謀の謎が中心テーマにあって、物語の背景を理解する為にも第1作から読む必要があるでしょう。前作ではまだまだ曖昧な部分がありましたが本書でようやく輪郭が掴めて来ると共に、全体的にはスパイ冒険小説的だなと感じられるシリーズの性格も浮かび上がってきました。恋人イモージェンが失踪してから一年が経ったある日、ハリーは前の事件で知り合ったデイヴィス刑事から突然呼び出される。ある下宿屋で男性が殺され、何と容疑者としてイモージェンが疑われているらしい。しかし事件の背景には巨大な鉱山を相続する彼女を陥れようとする国際的なスパイ組織が暗躍している気配がある。元ご主人の潔白を信じる黒ラブ名探偵ランドルフは真相を探るべく、外交官のセラピー犬として下宿屋に潜入する。本書でも犬が主役で語り掛ける形式でランドルフは事件の真っ只中に居て、PCを前足で操作してご主人のハリーに情報をeメールで伝えようとしますが今回は上手く行かず空回り気味です。それでもハリーにスクーターのヴェスパの後部座席に乗せて貰い街を爽快にすっ飛ばす場面や、最後にイモージェンを一緒に追跡して海でピンチになるハリーを必死に助けようとする場面には二人の絆の深さを感じます。今回ランドルフは病気で体調が優れず犬肉を求める料理人から執拗に追い回され絶体絶命になりますが、どうにか乗り切るのは日頃の犬徳の致す所でしょうか、悪条件下でも鋭い嗅覚で事件を解決に導く手際は真に天晴れです。推理的にはやや物足りないですが、リードを付けられてはいても本当は逆にハリーをリードしているランドルフの活躍に今後も期待したいと思います。
探偵犬はヴェスパに乗って
★★★★★
シリーズ第二弾。シリーズ化しているコージーミステリは、同じ登場人物でも、物語が独立している場合が多いが、ランドルフシリーズは前作を読まないと先に進まない。主人公の黒ラブ、ランドルフの元飼い主で、ハリーの恋人のイモージェンの失踪という大きなキーワードで繋がっているのである。
前作でイモージェンが生きていることがランドルフにわかり、やれやれと思ったのもつかの間、今回はそのイモージェンに殺人事件の容疑がかかる。イモージェンはなぜ姿を消したのか、なぜ、なにから逃げ続けているのかが本作で明らかになる。それにしてもだんだんストーリーがふくらみを見せてきた。今回の舞台は国連。ランドフルは外交官のセラピー犬として国連に入り込み、殺人事件の謎を追う。ミステリとしてのできはひとまず置いておいて、ランドルフが巻き込まれるあらゆる脱線事件を楽しみたい。
ランドルフが唯一、ハリーに情報を伝える手段にしていたシリアル「アルファビッツ」が、今回は捨てられてしまった。ハリーの体調不良の原因が小麦アレルギーだと診断されたからだ。そこでランドルフはパソコンを通信手段に選んだ。とはいえ文学好きの彼のこと、Eメールを送るついでに、ついネットのブックショップで「神曲」と「ユリシーズ」をハリーのカード番号を使ってお買い上げ。彼ならではの文学作品からの引用も楽しい。
ついにランドルフとハリーはイモージェンと短い再会を果たすが、イモージェンは再び姿を消してしまう。次回の舞台はカリブ海。シリーズにはランドルフの他にもさまざまな犬、オウム、ナマケモノなどの動物が登場します。