犬版「神曲」?
★★★★☆
ランドルフシリーズの第三弾。前作で再び姿を消したイモージェンを追って、ハリーとランドルフはカリブ海に浮かぶキュラソー島へ向かう豪華客船ノルディック・ブリス号に乗り込んだ。「ペット愛好家のためのクルーズ」と題されたツアーで、船上ではペット関連のセミナーやイベントが目白押しだ。そのひとつのマジックショーの真っ最中に舞台に出現した死体を巡ってランドルフが謎を解くため奔走する。
文学好きのランドルフの愛読書は「神曲」なのだが、まえ2作を読んだあとに感じたことは、このシリーズは犬版の神曲なのか?ということ。迷えるハリーはダンテ、イモージェンはもちろんベアトリーチェだし、ハリーを真実に導くために力を貸すランドルフはウェルギリウスといったところ。これはうがちすぎだろうか。ともあれ本作でハリーたちは地獄編を脱出し、イモージェンと再会合流を果たす。彼らはもう離れることなく、次作ではオーストラリアでイモージェンに降りかかった謎に迫るということだ。
一応本作も「密室トリック」と謳われているが、トリックは稚拙だしミステリの態をなしていないので期待なきよう。デブ犬の烙印を押され、ダイエットを強制されたランドルフが、ご馳走の誘惑と闘いながらも、怪しげな乗客たちと繰り広げるドタバタを単純に楽しんだ。