部落差別の成り立ちが腑に落ちます
★★★★☆
キヨメとケガレの概念を用いて部落差別の原因に迫った好著。「社会一般の差別体質を歴史から掘り返し、それを克服、変革する道筋をつかむために書いた」という著者の執筆動機が本書を貫いている。部落差別の特性を、忌避・触穢、職業、身分の一体化ととらえ、ケガレ意識や宗教上のタブーと江戸時代の封建的身分制度がどのように結合したか、個々の歴史的事件(検地、刀狩り、身分統制令、宗門改め、宗旨人別帳の別帳化)に即して平易に読み解いている。後段では、部落が本来持っていたキヨメ文化の再評価にも言及していて興味深い。本書は1998年から2008年まで立教大学の科目「日本文化の周縁」の「部落学」として行われた講演録がベースとなっている。新書版サイズで読みやすく、内容も充実。おすすめの一冊。