氷室冴子の「マイ・ディア」物語
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2008年に亡くなった『なんて素敵にジャパネスク』の氷室冴子には『マイ・ディア 親愛なる物語』(角川文庫,1990)という素晴らしい書き下ろしのブックガイドがありました。氷室さんが愛した少女小説・家庭小説を紹介したものです。そこで、氷室さんが一押しで推薦したのはジーン・ポーターの『そばかすの少年』(1904)と『リンバロストの乙女』(1909)でした。そのとき同時に角川文庫から出版された「マイ・ディア・ストーリー」という『赤毛のアン』以外の少女小説(ポーター作品や『昔気質の一少女』など)を紹介したシリーズの企画は氷室冴子と赤木かん子だそうです。角川文庫のポーター作品の訳者は『赤毛のアン』新潮文庫の訳で著名な村岡花子でとても読みやすいものでした。ただし、現在は角川文庫版は古本で入手するしかありません。氷室さんのブックガイドも古本のみ。今回の鹿田訳はたいへん誠実な訳だと思います。
手首が切り落とされて捨てられた名前もない少年が森番として雇われ、忠実な仕事が評価され、少女の愛と自分の乳児期に起こった真相を知ることによって生きる気力を得る成長物語。ちなみに『赤毛のアン』の刊行はこの本より後の1908年。
何度も映画化されていますが、1992年のUSAのTV作品(“City Boy”)以外はDVD化されていないようです。