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害虫の誕生―虫からみた日本史 (ちくま新書)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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米や野菜を美味しく頂くまえに・・・ ★★★★☆
農薬を一切使わないとされる有機農法が注目を浴びている昨今だが、私は、それはある意味、害虫と長年戦ってきた人類の農業史を、根底から覆す農法ではないのかなと、ぼんやりと考えていた。しかし、本書は「害虫」という概念じたい近代的で新しいもので、そういった私の考えはただの思い込みにすぎないことを教えてくれた。

本書は、「害虫」と人間の関わり合いの歴史を豊富な事例を元に、わかりやすくまとめられている。台湾などの植民地から、北海道や沖縄の開拓地まで、近代になって日本の領土が広がっていくごとに、現地の昆虫は開拓者に深刻な病気をもたらしてきた。その対策として、政府が西洋の対策を取り入れて、学者に調査と実験をさせて本腰を入れてきた歴史や、特定の虫を「害虫」として国民に広く知らしめるための教育に腐心してきたことが、述べられている。

さらに注目すべきはエピローグであり、日本はかつて、「害虫」と呼ばれる昆虫を無理に排除してこなかったから、エコロジカルであるといった、「西洋=自然破壊、東洋=エコロジー」という単純な二元論的な議論を超えなければいけないと主張している点である。こういった「西洋対日本」という対比は他に多くみれる主張であり、ただの自己満足ならぬ「日本人満足」に陥っていることが多い。つまり「害虫」だけでなく、概念や価値観は、時代による社会的な利益によっていくらでも変容してきたものである。本書は「害虫」が、不快感ではなく、かなりの満足感を人間に与えてくれる一冊である。
科学の発達と社会の変化とが“害虫”という概念を産み出した ★★★★☆
「害虫」に関する一種の“薀蓄本”として読んでも十分に面白いが、それだけで評価するのはあまりにも勿体ない。著者本来の野望は、エピローグやあとがきに書かれている通り、自然科学もそれ自体として社会の影響から独立して自立的に発達するものではないことや、それと同様に、我々にとって「望ましい自然」や「そのための科学技術」について考えることは即ち、我々自身が自分たちにとって「望ましい社会とは何か」を考えることに他ならないのだということを、気づかせるところにあるからだ。

著者は「害虫」に対する我々の固定観念(人はそれを「常識」と呼ぶ)を次々とひっくり返して見せることで、自身の主張を裏付けていく。害虫概念の変化は、むしろそのための格好な素材だったと考えた方が良いのかもしれない。

しかしこのところ、本書と同様、自然環境の問題に対して、自然科学の分野からだけではなく、人文科学、特に社会学の分野からアプローチして行こうとする態度が一般化して来たような気がする。現在の自然環境の変化が、他でもない人間社会の変化によってもたらされたものであり、その結果として失われた自然環境の活力を回復するためには、まず人間の社会が変わる必要があることを考えるならば、それは誠に喜ばしいことである。

本書の内容はいわゆる「昆虫好き」の皆様から見れば些か物足りないものなのかもしれないが、ヒトの社会と自然の生き物との関係性に関心を持つ者にとっては、大いに学べる。少しでも多くの人々に読まれることを願う。
虫と農薬と医学と戦争の深い関係 ★★★★★
「害虫」という概念が、どのように生まれたのかをわかりやすく解説した画期的な本である。
 本書の中心となる虫は、イネを食害する蛾や、伝染病を仲介する蚊・蝿等、ヒトの生産活動や健康に害を及ぼす虫である。それらがどのように「害虫」と呼ばれるようになり、排除されるようになったのか、資料を示しながら解説している。
 江戸時代まで虫による農作物被害は天災とされていたが、明治になってもたらされた社会の近代化・均質化によって「害虫」の概念が形成されたと筆者は述べる。また、戦争によって農薬の必要性が高まり、虫と農薬についての研究が進んだという指摘は大変興味深い。
 その種数と個体数において他の生物を圧倒する虫。地球は虫の惑星なのである。私たちはこれからの環境問題を考えていく上で、虫についても本書のように生物学的な面からだけでなく、より多面的に考察する必要があるだろう。
 蛇足ながら…本書の帯には「なぜゴキブリは嫌われるのか?」のコピー。本書は、いわゆる「不快虫」とヒトとの関わりを中心にした本ではない。誤解を招く宣伝文句だと思う。
害虫研究の黎明期の人々にスポットを当てた社会史的新書 ★★★★☆
 そもそも「害虫」という概念の生い立ちから始めなければならない。
 明治時代に日本を訪れた外国人は一様に驚いたと紹介されている。いわく「日本人が大量の蚊、シラミ、ノミに囲まれていながら、まったく気にしていない」と。
 当時は当然の光景、環境で、ムシと共存していたということか。
 では、いつから「害虫」を徹底的に排除する社会になっていったのか。
 本書は害虫研究の黎明期の人々にスポットを当て(害虫紹介がメインではない)、殺虫剤開発の歴史などをひも解く。
 害虫に対する欧米との認識の差も興味深い。
 なかなか読みごたえがある。
読みものとして面白いです。 ★★★★☆
歴史とあわせて、害虫について述べており、興味深く読めます。
しかし、やや、表層的な感じも否めません。
話のネタとしては十分だと思います。

この分野では、新しい教科書が少ないのですが、より深く知るには、朝倉書店の「応用昆虫学」、「昆虫生理生化学」などがオススメです。