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原爆から水爆へ〈下〉―東西冷戦の知られざる内幕

価格: ¥5,040
カテゴリ: 単行本
ブランド: 紀伊國屋書店
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米国での「スーパー」開発までの道のり ★★★★★
下巻では、ソ聯の原爆第1号(通称「ジョー1号」)実験、カーチス・ルメイ主導による米国戦略空軍の拡充、米国当局による対ソ協力者(上巻参照)の逮捕、そして米国が核戦略での優位を維持しようと邁進した水素爆弾(通称「スーパー」)開発のさまが描かれている。結局、ソ聯も水素爆弾開発に成功、それも米国よりも「効率的な」サイズでの開発に成功する皮肉な結果となった。米国の「スーパー」はあまりに強力で開発当初は弾頭も大きく、使い勝手が無いものだった(ただ、相手国に対する強力な牽制力誇示にはなった)。

米ソ両陣営の対立の流れ(ベルリン封鎖、朝鮮戦争、キューバ危機)の中で、米ソ両国の最高執政責任者の誰もが核兵器の実践投入を容認しなかったのだが、その一方で、本書では、米国軍内においてはカーチス・ルメイという、相手国に「サンデー・パンチ(先制大打撃、の意)」を食らわせるべく核兵器を実戦部隊に配備し有事に備えようとする、熱心な実務家が存在していたことが紹介されている。

私はかねてから米ソ冷戦体制が長続きした理由を知りたいと思っていたのだが、米国側でもカーチス・ルメイのごとく「最小限の犠牲による自国防衛のためにはサンデー・パンチを」と考える、ある意味でナーバスな人物が戦略空軍の拡充に努めていたと知ると、冷戦が40年近く長続きしたことも納得がいった。要は、米国も、ソ聯も国を挙げて冷戦の継続に取り組んでいたのであった。

後半では、米国での「オッピー」ことロバート・オッペンハイマー追及聴聞会への経緯が記されている。ひとりの科学者の一発言一挙動に国家を左右しかねない注目が集まってしまったことへの「危機感」「ゆれ戻し」が、裁判のような聴聞会が開かれる原因となったのではないか、と私には思われた。