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原子爆弾の誕生〈上〉

価格: ¥6,825
カテゴリ: 単行本
ブランド: 紀伊國屋書店
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【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:R.ローズ 著 神沼 二真 他訳 出版社名:紀伊國屋書店出版部 発行年月:2009年05月 関連キーワード:ゲンシ バクダン ノ タンジヨウ ジヨウ フキユウバン げんし ばくだん の たんじよう じよう ふきゆうばん、 キノクニヤシヨテンシユツパ 1322 きのくにやしよてんしゆつぱ 1322、 キノクニヤシヨテンシユツパ 1322 きのくにやしよてんしゆつぱ 1322
原子物理学の学問と軍産複合体という破壊集団の出会い ★★★★★
R・ローズの筆は、ここで冴えの煌めきを示している。原子核兵器の端緒は、遠くにはベクレルとキュリーの放射性物質の探求に始まる一連の研究である。また、地球の火山活動に関して、地下の地熱には放射性物質の核分裂があるのでは?という疑念が遠い昔に出された。ウイリアム・トムソン(ケルビン卿)の地球冷却の理論に合致しなかったからである。そして、二十世紀の幕開けには、プランクに始まる量子論とアインシュタインの相対論は、この原子核分裂と融合の事件を前もって準備していたに等しい。直接的には、核分裂による莫大なエネルギーの解放は、O・ハーンとR・マイトナーの核分裂の発見に始まる。最初の発見者は助手のマイトナーであったらしいが、この核分裂という現象は、生成物の質量が減っている事から、その減少分の質量はエネルギーに完全に変化すると、莫大なエネルギーになる、E=MC2乗は、その指標となった。この途轍もない発見の意味を正確に理解していたのは、WハイゼンベルクやNボーア等の理論家たち、またアメリカに亡命していた、Eフェルミや、Lシラード、Hベーテ、Eテラーとアメリカの物理屋、AOローレンス、Rオッペンハイマー、Aコンプトン、Lアルバレ、その他の物理学者たちである。

それにしては、全く時代が好くなかった。それは、世界戦争の前夜であり大戦期を通じて、この発見は、地下では、原子兵器に関する秘密の開発が進められていた。そしてEフェルミはシカゴ大學に人類史上初めて、黒鉛型原子炉を造り臨界状態を出現させる。アインシュタインに進言し、ルーズベルトが核兵器開発を決定する様、協力を求めたのは、過っての弟子にあった、Lシラードだが、ローズのこの本は、アメリカに於ける原爆開発の秘密計画を詳細に渡って書き連ねている。ヨ−ロッパから亡命してきた、原子物理学者、理論家や実験家が、この計画に動員された。ドイツにはハーンやハイゼンベルグ、が居たし、アメリカは、莫大な秘密予算を使い、この計画を推進する為に、秘密裏に中西部の僻地ロスアラモスに研究基地を造った。では、日本では如何であったか?核分裂と言う現象を兵器に結び付ける可能性を認識していたのは確かであった。海軍はこの情報を知り、仁科博士達にその実態を聞き、ウラン鉱石の調査発掘を計画したが、しかし具体的な開発計画を実施したと言う事は無かった。工業技術的にも資源的にも、それは、既に遅きに失して居たのである。

アメリカでも、多くの科学者を動員したこの計画は、前代未聞の現象である、何故なら、この様に多くの理論家や実験家が、莫大な資金を基に核兵器を開発するという事業に参画する事は、歴史上過って無かったからであり、この時から科学者は、邪悪に手を貸す魔王の役割を果たすのである。オッペンハイマーは「物理学者は原罪を知った…」と、言ったが、第二次大戦以後には、兵器開発に物理学者を動員すると言う、軍産複合体の基本戦略が始まった。水爆の開発には、さすがに、オッペンハイマーは拒否したが、Eテラーは、進んで協力を申し出た。そして、マッハッタン計画の要員を指揮して、水爆の開発に邁進する。テラーの境遇を思えば、その様な行動を予想する事は確かに出来る。青年期に体験したソ連の恐怖政治のおぞましき記憶は、水爆開発への動機と成ったのであろう。

大戦末期、既に、アメリカ空軍の日本空襲自体が、民間人に対する無差別爆撃であった、東京大空襲の一日だけで、十万人が焼き殺されたのだが、原爆はそれに輪を掛けて、無抵抗の婦女子を何十万と焼き殺した。いたいけなる幼児や母親、老人、旧制中学生、高等女学校の少女達、瞬間的に一万度に達する炎の中で、彼らはその命を苦悶の中に失ったのである。そういう事実は如何に言い繕っても、消そうとしても、消えるものではない。軍部は、浮世離れしていた学問に生きていた学者の価値を突然見出した。と同時に、人間社会は、真に自滅の危機に直面する事になるのである。軍産複合体という死の商人と核兵器は存在悪であり、それは、戦争と共に廃絶されねばならぬ。パワーポリティクスは、果して、本当に今も真に有効なのか?普遍的な世界政府という枠組みは、人間の起こす破壊と戦争に終止符を打てるのか?民族主義から普遍的協調主義へ、人間の存在と滅亡が問われる時なのではなかろうか。
読後、やるせない。 ★★★★☆
 上下巻あわせて1000ページ以上。ものすごい数の登場人物が出てくる。しかも章によって主役が目まぐるしくかわるので、20世紀前半の科学しに詳しくない方は「この名前、前にも出てきたっけ?」といった混乱に陥るかもしれない。

 中心人物として出てくるのは、レオ・シラード、アーネスト・ラザフォード、オットー・ハーン、ニールス・ボーア、エンリコ・フェルミ、ロバート・オッペンハイマー、アーサー・コンプトン、アーネスト・ローレンス、といった面々(アインシュタインは脇役だ)。彼らがだいたいどんなことをした科学者であるかを知っていて読めば、彼らの人物像や性格などの「生」の部分に触れられることができるので、興味も数段増すだろう。

 感情抜きで考えれば、貴重な経験をすることのできる本だ。連合国側の科学者たちが原子爆弾を作るまでの研究や、政治家たちの駆け引きなどをありのままに読むことができるのだから。
 ただ、感情移入してしまえば、日本での戦争末期の惨状を尻目に、まるでサイコロを投げるようにして標的都市を決めたり、広島に落とされる「リトルボーイ」にくだらない落書きをしたり、投下直後に原爆開発者のオッペンハイマーが「まあまあの出来栄」などと悠長にコメントしたりという事実があったわけで、人の命をこんなにも軽々しく考えていたものかとがく然とする(その後オッペンハイマーが原爆投下を後悔したのは救いだ)。

 結局はだれにも止められなかったわけだ。ドイツでの原爆開発が進んでいないことがわかってからもなお、大義を差し換えて開発を続ける(最近のどこかの超大国のようだ)。開発反対に回る科学者はごく少数。戦争が加速させる時の勢いとはそんなものかと思う。

 なお、「水爆を最初に考えたのは日本人」という話が出てくる。重版以降なおされたかわからないが、これは著者ローズによる資料の誤読なのだそうで、指摘しておく(岩波ジュニア新書『科学の10冊』に詳しく載っている)。