著者は、「はじめに」の中で、本書の目的を下記のように定義しています。
・「読み手に負担をかけないビジネス文章を書く能力の習得」を手助けする

そして、「読み手に負担をかけない」とは、下記2点のことであると定義しています。
・読み手になるべく文章を読ませずに、それでいて必要な情報を伝達する
・一読で内容を誤解なく理解してもらえる

本書は分かり易いです。理由は、本書自体が「読み手になるべく文章を読ませずに、
それでいて必要な情報を伝達でき、一読で誤解なく理解してもらえる」という観点で
書かれているためです。本書自体が、本書の主張を実践した成果物であると言えます。

本書は、基礎編、理論編、実践編の3部構成で、全19項目で構成されます。
概要は下記です。
・基礎編：分かり易い文章とはどういう文章かを解説：5項目
・理論編：読み手に負担をかけない文章を書くための7つの法則を解説：7項目
・実践編：理論編で学んだ技術の応用の仕方を解説：7項目

「基礎編」では、どういう文章が分かり易いのか？、分かり易い文章は
どうして分かり易いのか？を解説してくれています。
・「管理職には30秒で情報を伝達できるように書く」が納得感が高かったです。

続く「理論編」が本書の核です。理論編は特に分かり易いです。
7つの法則について、まず解説があります。
次に、各法則を実践することの効果と実践する際の注意点(ポイント)が書いてあります。
更に、各法則には、具体例とコラム、トレーニング（演習）が付いています。

7つの法則が、一貫して同じ構成で書かれているため、分かり易いです。

もちろん、書かれている内容（7つの法則）は実践的です。
7つの法則を実践すれば、少なくとも現状よりは、すぐに質が向上すると思います。
理論編では、簡単な演習を通じて実践できます。定着を図る第一歩になります。

本書の最大の特徴は、文章の構成、パラグラフ（段落）の構成に焦点を当てている点です。
文章を書く上では、日本語の文法も大切です。但し、構成が分かりにくければ、
単文がどんなに正しくても、読み手には負担が生じてしまいます。構成の分かり易さは、
読み手に負担をかけないことの最低条件であり必須条件であると感じました。

※余談です
「理論編」の最後のコラムが印象的でした。
「肯定文の力」というタイトルで、日本人は否定文が好きだという内容でした。
例えば、日本人は「正常である」ことを報告する際、「正常です」と言わずに、
「異常ありません」と報告することを好むようです。強く意識したことは無かったですが、
言われてみれば、その通りだと感じました。本コラムに関する著者の主張は、
否定文を使うときは、肯定文で表現できないか見直そうということでした。
意識してみると、身の回りでも否定文を用いた表現が多いことに気付きます。