医療制度に関する貴重な資料も
★★★★☆
第二次世界大戦に敗れたドイツは二分され、東部はソ連を中心とする社会主義、西部は英米を主とする自由主義の下で、新しい時代を模索することになった。東ドイツは1949年に建国を宣言したが、1990年には西ドイツに併合されることになった。ドイツ統一まであと数年という未曾有の変動期に、著者舩津博士の一酸化炭素中毒に関する論文が、東ドイツのドレスデン医学アカデミー労働医学教授R氏の興味を引き、二人の交流が始まった。
著者は
「日本を代表する民間大使になったつもりで、家族が寝静まった深夜よくR氏に手紙を書いた」と述べている。評子もその当時西ドイツを訪れることはあったが,その当時東ドイツに入国することは容易なことではなく、あまりにも遠い国であった。その遠い国へ著者は家族を連れて乗り込んだ。Curiosity、Challenge、Creationの3C人生を強調する評子は舩津博士こそ正に3C実践者として敬意を表したい。
著者は1987年R氏の招きで東ドイツを訪問し、社会主義下における医療制度を直接見聞して貴重な資料を得、自由主義経済の医療実態と比較している。高齢化問題を背景に医療制度の望ましいあり方が論議されている日本の明るい将来像を描くためにも、貴重な一冊である。(某国立大学名誉教授 英語教育学)