疲れた時に、ときどき坪内本に手が伸びる
★★★★☆
『週刊文春』における坪内の連載書評「文庫本を狙え!」をまとめた本で、『文庫本を狙え!』、『文庫本福袋』に続く第3弾……と書くと尤もらしいが、私は連載そのものは読んだことがない。本になったものは読んだ。
正直言って坪内の本の趣味は私には縁遠い部分が多く、書評された本を読むということも、ほとんどない。それでも時々思い出したように坪内を読むのは、坪内流の本の「愉しみ方」というのが、やはりあくせくしていなくて息抜きにはいいからなんだと思う。
そもそも書評の効用というのが、確かに知らなかった本のことを教えられて購入することもあるけれど、すでに読んでたり大体の内容を知ってる本について他の人が何を言うかという関心からの方がむしろ多いし、本書なんかの場合はむしろ書評そのものへの関心の方が勝っている。斉藤美奈子の書評本なんかについても、同じようなことが言えそうだ。
小説や映画そのものより、売れ行き情報や賞レースや批評といった周辺に漂い出す言葉に接することを好み、その伝播に加担するのは、蓮實重彦流に言えば共同性再生産的な「紋切型」であり、サルの毛繕いにも似た「無償の饒舌」ということになるのだろう。書評に至っては、批評たる覚悟を欠いた「万引き」行為だとさえ蓮實は言っている。しかしまあ、「紋切型」や「無償の饒舌」にも出来不出来はあるワケで、それはそれで「人生の愉しみ」の一つではあると私は思っている。
ただ坪内の書評には「評」と言うより「挨拶交換」みたいな部分も仄見えて気にかかることがあるし、細かいことだけどp447の「かって」は「かつて」の誤りでしょうね。