経営心得帖 (PHP文庫)
価格: ¥500
本書は、経営の神様と呼ばれた松下幸之助が、経営者としての心得をつづったものである。
「苦情を生かす」「不景気には時を待つ」「不良をなくす」など、取り立てて目新しいものは見つからないが、言葉の端々に松下電器の基礎を築き、発展させた偉大な経営者ならではの企業を存続させる秘訣が見て取れる。
得意先や消費者に「儲けを認めていただく」、節操なく接待するのではなく「相手の時間も大切に」、「部下が偉くみえる」ほど部下の才能を認める、といった話からは、著者の誠実さや謙虚さ、そして経営者に必要な資質を感じる。
今日、マーケティング関連から部下を生かすコーチング技術に至るまで、経営に関する本は山ほど出ているが、本書を読む限り、この松下幸之助という人物は誰に言われるでもなく、そうした本で説かれることを実践していた人物である。
どんなに時代が変わり、商売の形態が変わっても、経営者に求められる本質的な部分は変わらない。そういう意味で、本書はすべての経営者によって読まれるべき本と言えるだろう。(土井英司)