著者は、高級紙「フィガロ」の経済部門の副編集長で、フランス人ジャーナリストのステファヌ・マルシャンだ。ワシントンやイスラエル駐在の経験もあり、国際感覚を持ち合わせた抜群の経済通として知られる一方、フランス人特有の美意識で、狂騰するブランドビジネスの功罪に斬り込んでいく。また、「世界で一番ブランド好きな民族」と揶揄(やゆ)される日本人のなりふり構わない購買欲に、痛烈な批判を浴びせる点も見逃せない。
華麗なビジネスの裏側の想像を絶する戦争は、どんな超一流メゾンであっても一刻たりとも安穏とできない弱肉強食のサバイバルゲームである。買収、ライセンス取得、訴訟、倒産、広告戦略。膨大なビッグマネーが瞬時に動く戦慄の舞台裏を一度覗いてしまった者は、この先街で目にする華やかなブランドアイテムを、非常に複雑な思いで見つめてしまうだろう。(田島 薫)