翻訳が素晴らしい
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もとの内容もとてもエキサイティングで、ITベンダーによるクラウド(雲)のほうの喧噪に辟易していたところ、群衆のクラウドのほうの話はとても参考になり、二つのクラウドが関係し合う可能性を見つけられそうです。内容と合わせ、素晴らしいのは翻訳!。日本語になっていない翻訳が多い中、原書を読む感覚で正しく内容が伝わる訳を久々に見た感じです。変に日本語に意訳するのでなく、原文をそのまま読んでいる感覚の訳ですが、これが本当の翻訳なのだなあと思いました。
地球規模のイノベーションは、静かに、しかし急速に革命を起こす
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こちらのクラウドは「雲」ではなくて「群集」のほうです。
クラウドソーシングの名づけ親たるジャーナリストの著者による
「今そこで起こっている」未来を、丹念に克明に描いた労作。
400ページの大作ですが、現代人は必読です。
世界の社会基盤(政治、経済、社会制度)が、メタモルフォーズし、
その上で営まれる人類の生産活動が、どのように変貌していくのか?
過去、現在、そして未来をクラウドソーシングで展望する。
本書を読むと、「クラウドソーシング」とは、一過性の流行語では
なく、経済社会と個人の能力の具現化の新しい時代を開く、産業基盤
革命であることがわかります。さらに、「フォーディズム」で、個人という
人間の能力を分断し、専門家し、可能性を閉じ込めて、機械化されたことの
反動、つまり、世界に存在している名もない個人は、その人の職業「以外」
に、全人格的な生産性をもった才能がある、ということです。
その分業で満たされない個人の創造性を開放したのが、ネット。
そして、ネット上に構築され、改造され、毎日毎時毎分、生み出され続ける
クラウドソースという、生産革命。
本書での未来は「デジタル機器やネットを何歳から使いはじめたか?」と
いう問いに答えられないデジタルネイティブ(ガス、水道、電気、テレビは
いつから使ってますか?に応えられないのと同じく、生まれる前からあたりまえ)な世代が、
デジタルイミグラントたる我々世代(20世紀世代)を超えて
さらなる革新を地球規模で起こしていくドキュメントで終わります。
さらに、本書では、「企業名」よりも「個人」が、何を考え、何をして、
コミュニティがいかに形成されて、価値を生み出してきたか?という、個人の
復権をも強くメッセージアウトしている点に、私は注目したいと思います。
クラウドソーシングを支えるのは、我々を含めて「無名の個人」大衆なのでしょう。
新しい時代を迎えました。
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P&GのCEOであるラフリーは
販売部門と研究開発部門
エンジニアリング部門とマーケティング部門
仕入れ先、小売店、顧客とのあいだの壁を開放しました。
P&Gの収益性は伸び続けています。
サンマイクロシステムズ社の創業者ビル・ジョイは
以下のように述べています。
頭のいい人々のほとんどは他人のために働きます。
人間は自分の利益を考えて行動すると昔から言われていますが
クラウドソーシングはそうとはかぎらないことを証明しています。
自分の知識を誰かに教えることには大きな喜びを感じます。
将来的には特許審査の一般大衆へのアウトソーシングも
ありうるかもしれません。
P&G、デュポン、BASFなどの大企業で
研究員が長年かけて取り組み、解決できなかった問題を
インノセンティブという問題解決型ウェブサイトで
簡単に問題が解決されることがあります。
そしてその問題を解決した人々の75%が既に解決法を知っていたのです。
インターネットを利用する10代の33%が
ほかの誰かのウェブサイト制作にかかわっています。
大人はたったの13%です。
10代の方が自分のブログやウェブサイトを作るよりも
他人のを作る手伝いをすることが多いのです。
10代はたんに友達づきあいをしているのかもしれませんが
そうするなかで新しい社会行動や認知能力を急速に身につけつつあります。
新しい時代を迎えました。
この事実を知っている会社と知らない会社では大きな差がでるでしょう。
個人も同じだと思います。