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おめでとう (新潮文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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切り取った、絵のような。 ★★★★☆
 ジャンル分けをすれば、恋愛小説ということになるんだろうけど、なんだかそういった言葉では表しきれない、奥の深い作品だなと思いました。奥が深い、というのは、1度読んだだけではその良さがきっとわかりきらない、と思うのです。きっと何度も読んで、ようやく心にしみいるような静かな作品。

 それぞれの短編は、恋愛のごくごく一部、ある日のある場面を切り取ったような描き方をしていて、一瞬の大切さとか、相手を想う切なさとか、恋に恋して浮かれているときにはわからない、恋と愛の間のような情景をうまく描き出しています。なんだか絵画のような作品。

 私はもう結婚しているので、新たな相手とこんな風に想い合うことはない(はず)と想うけど、恋愛って、こんなにいろいろなパターンがあったんだと素直に感心してしまいましたよ。こんな関係もあるんだな、って。社会的に見てどういう関係か、ということではなくて、今あなたといるこの瞬間が愛しいとか、あなたと過ごせた時間が素晴らしかったとか。そんな風に想える恋愛は、きっと女性を美しくしますよね。

 いい人と巡り会って結婚して幸せに暮らす、という方法以外にも人を想って幸せになれることもあるんでしょうね。登場人物は若い人もいるのですが、自分が若い頃に読んでいたら、まったく面白いとは思わなかっただろうなと想います。本ていうのは、読む適齢期というものがありますね。これは、30すぎてから読んだ方が面白いかな、と思いました。
美しくユーモアもある川上ワールド ★★★★★
私は川上弘美デビューがこの本だったのだが大正解!
川上弘美さんといえば、ほんわかした世界を書く方と勝手に想像していたのだが、この作品は1編目から同性愛ときて度肝を抜かれ・・
表紙ののほほんとしたイラストからは想像も出来ない大人の色恋沙汰が満載。
しかし、男に騙される、不倫、幽霊、と言葉ではどろどろした世界も、彼女の巧みな言葉の魔術により温かく変化している。
大人にしか理解出来ない、恋愛の心のひだをここまで表現出来る作家は希有だと思う。
また何気ない、軽く見えるような文章ひとつにもいちいちため息をつくほど、日本語の美しさを再発見できた。
一回読み出すと引き込まれる魅力的な短編ばかり。
どれも心の片隅に残る、味わい深い作品。
切ない「た」、強さの「ある・なる」 ★★★★☆
いつも思うのは、
こんなふうに完璧に日本語が構築されていくことの驚き。

それと非常に強い現実味。
こういう体験を作者自身がしていなければ
ありえないだろうと思わせる、手でつかめそうなほどの感情の確かさ。

しかしこの作品中には、
まったく現実にはありえないファンタジーもあるので、
いわゆる私小説的な世界ではない。

だとしたらこういう内容の事柄を
頭の中で想像するって、
どういうことなのだろうか・・と思ってしまう。

読後、冒頭の1篇を、小さな声で音読してみた。
すると黙読とは全然ちがう魅力が味わえる。

語尾の「だ」や「た」が、せつない。
「なる」や「ある」は、
女性らしい現実主義的な明るさや力強さにあふれる。

ちなみにその一篇の冒頭の4行、
文章は4つ。
語尾はすべて「た」。
句点も4つ、「て」あるいは「で」。
普通こうなると、
「繰り返し」が気になるものだが、
そんなことをまったく思わせない。

これだけでも作者の日本語構築力が
尋常ではないところに来ていることがわかる。

心から相手を必要と思える気持ちの温かさ ★★★★☆
川上弘美の作品は恋の駆け引きや、ジェットコースターのようなスリリングでドキドキでいっぱいの気持ちはあまり感じられない。
けれど、いつの間にか心から必要になる過程というか、流れが自然に描かれています。

文面はものすごく静かですが、中で渦巻く欲求がとても激しく表現されていて、ついつい引き込まれます。

この本の中で特に『天上大風』が好きです。

夫に浮気をされ、社内恋愛をした年下の彼に、預金を一寸借りられた女性の話。
(どうしても盗まれたとしか思えない・・・ケド)

私が他人から取られたもの、たとえば預金とかを考えて、恨むのではなく、彼と過ごした時間の素晴らしさを考えられるような女性になりたいな。
好きな描写にうっとり ★★★★★
 最近、おんなのひとの魅力にとりつかれている。
 川上弘美さん自身はもちろん、彼女の作品の中の魅力的な女性に、とりつかれているのだ。
 「春の虫」など、暗記できるかと思うほどに何度も読んだ。好きな描写が何度も出てくる。
「さきほどショウコさんを羨ましいと思う以外の余分な気分がきゅうにおしよせてきた」私は記憶だけで書いているのですが。
 ものすごく好きな描写です。
 一体、どういう気分なのか。考えても、その場にいて、感傷に浸らねばきっとわからぬ感情であるのかもしれません。そう考えたら、川上弘美のせかいに入り込み、そういう感傷に浸りたい。そう思いました。
 彼女の短編は本当にうつくしい。