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アンボス・ムンドス―ふたつの世界 (文春文庫)

価格: ¥570
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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やっぱり物足りないかなあという感じ ★★☆☆☆
桐野夏生さんの作品は、
村野ミロのシリーズや、「OUT」など、

長編は、いくつか読んでいるのですが
短編集は恐らく初めてです。


「アンボス・ムンドス」には
7編入っているのですが、

私としては、表題の「アンボス・ムンドス」よりも

前半の4編、「植林」「ルビー」「怪物たちの夜会」
「愛ランド」の方が印象に残りました。

桐野夏生さんらしい、という感じでしょうか。

この短編集について、ネットで感想を見てみると

皆さん、決まったように、女性の「毒」といった言葉を
使われてる方が多いのですが、

私は、感覚が鈍いのか、読みなれてるのか
それほどは感じなかったです。


自分にとって衝撃的だったというか
印象深い桐野夏生作品は

映画化もされた「OUT」と、もうひとつ、
タイトルは忘れてしまいましたが

村野ミロの人間関係が全部壊れて、
シリーズ最後かと思われる作品。


それらに比べれば、
やっぱり物足りないかなあという感じ。

無意識のうちに、桐野夏生さんには、
重い長編を期待しているのかも知れません。
桐野さんの「想像力」に脱帽 ★★★★★
「愛ランド」では、地味で中年の独身女性、鶴子が自分の性体験を告白する。それは結構突拍子もない話で、さまざまな年齢の女がある島に連れられ、その島で女たちは男どもに競り落とされるというもの。鶴子も男たちから競り落とされ、思いっきりいたぶられるがそれが快感で止められないという話。

地味な40代の自分を奴隷として性の対象としてみてくれることに渇望感があり、それを満たしてもらえる喜びが鶴子にはたまらないのだろう。今まで見向きもされずに生きていただけに、自分のためにお金を払ってまでチヤホヤしてくれていることに恍惚するのだろう。

美人で才女の桐野さんの「想像力」に脱帽してしまった1冊だ。
短編でもすごすぎる、桐野ワールド ★★★☆☆
「グロテスク」以来、あまりにバイオレントなパワーに臆していたが、短編集ならと久しぶりに手にとった。一作ごとの完成度が高く、「読んだ」というずしりとした手ごたえを感じた。しかし、読後感はあまりよくなかった。世界はこんなに悪意や敵意に満ちた場所だったろうか? 女とはかくも残酷で邪悪だったろうか? とくに、見ず知らずの子どもに恐怖を植えつける「植林」や、毒草ばかり植えて義父への恨みを募らせる娘が、義父ともども突然殺されてしまう「毒童」はすごい、うまい、だけど救いがない! 疲れてしまった。「小説を書くのは悪人でなければならない」「表現することは闘うこと」という桐野さんの文章に、悪人になって闘う彼女自身が投影されているように感じた。
違和感の正体がわかった ★★★☆☆
初期の頃から桐野さんの本が好きだったが、でも最近、もう方向性が違うことがこの本を読んではっきり
わかった。それぞれの短編は確かにすばらしい出来だし、インパクトもある。でもプロットがだんだんなくなってきて、ただ人間の奥底にある闇、や悪意、そして露骨な性描写などを書き連ねるようになってきたのだ。
「残虐記」や「グロテスク」など人間の精神構造ばかりを深く掘り下げても、それは深くなっているようで表層的な捉え方に収斂していくように感じる。読んでいて壮快な気分もなければ、ただただ露悪的な気持ちになるだけだ。
 一個人ファンとしてはしばらく遠ざかりそう。

 
本来なら長編として書かれるべきはずの7つの短編 ★★★★☆
 桐野夏生は基本的に長編の人だと思う。その溢れ出す想像力、二枚腰、三枚腰の体力、すべてにおいて過剰だ。デビューが遅かったことによる人生経験の蓄積が才能の枯渇を恐れないアグレッシヴさに繋がっているのだろうか?とにかく埋蔵量がハンパじゃない。
 それは、この7作品を収めた短編集を読めば手に取るように分かる。はっきり言ってどれひとつ取っても短編のフォーマットに収まっていない。大きくはみ出してしまっているのだ。本来なら長編として書かれるべきはずの短編。濃縮果汁を素で飲むような、もったいなさと消化不良感がある。
 桐野夏生自身も桐野夏生が描く女たちも、まさに「女」だ。そこに誇張はなく、リアルだ。俺は男だけど、桐野夏生が描く女が「女」なんだろうなと思う。俺も「女」になってみたかったよって憧憬と、反面、男で良かったよっていう安息と。
 リアルに対するヴァーチャル側からの挑戦って著者の意図もますます鮮明だ。やっぱ「アンボス・ムンドス」。確か、なんかの事故だか災害報道がきっかけで教師の不倫旅行がばれたってニュースを耳にした気がする。でも、それが「アンボス・ムンドス」発表の前だったのか、後だったのか、自分の中でわからなくなっているし、そんなことどうでもよくもなってる。とにかく、桐野夏生はリアルの素材をほんの取っかかりとして、まったく別の物語を構築し、我々に放り返してくる。“リアルを超えてく創造力”こそ、今、誰しもが意識して身に着けなくちゃ生きていけないサバイバルスーツなのだと思うし、その前衛として桐野夏生を尊敬もし、信頼もする。まぁ、やっぱ、桐野夏生は、とことん深く、長く、しっぽり、ねっとり長編で味わいたいけどな。