改訂により、さらに充実
★★★★★
この本は、達人とたたえられる著者の、20年以上の教員経験の蓄積が凝縮されているといっていい。その蓄積とは、生徒(中学生)が共通に犯しやすい文法や語法上の誤りを書きため、それを簡潔に分かりやすくひと目でなっとくできるような図表や説明にしてまとめあげたということ。極めて安価で、その長年の努力の結晶が入手可能だということに、感謝の念が湧いてくる。
その一方で、改訂前のものを、私自身(専門学校教員)が使用するなかで、すこし使いづらいと思えたり、不十分と思える点があったが、それらの多くが今回の改訂により改善されている。NHKのプロフェッショナル等でも取り上げられる著者の名声も手伝い、広く使用されているなかで、著者に直接、あるいは出版社に多くの意見が寄せられたことと思う。(なにより著者自身が気づかれたことも多いと思われるが)それらの声に耳を傾け、誠実に受け入れ反映しようと努力された跡が伺える。
具体的には、冒頭、語順表の全12パターンが見開き2ページのなかに一望できるようになったこと。1−B(五文型の第1文型すなわちSVにあたる)の副詞句部分の扱いの誤りが訂正されたこと。各パターンで使える動詞リストの語数が拡充され、一覧の中に該当ページが明記されていること。
改訂前では、副詞・および副詞句のリスト(どどい表現)がある一方、形容詞のリストがなく、本書全体のなかで、形容詞の扱いが今ひとつ軽いように思っていたが、200近い主な形容詞のリストが今回の改訂で加わった。
巻末の名詞軍団表も、拡充され、図表が大きくなり見やすくなった。
さらに、改訂前の最大の弱点と思われた、中学で学習する時制の扱い(パンチゲームにくわえ、もう一つ解説がほしかった)が最後のページに「be動詞編」と「一般動詞編」に分けて現在・過去・未来とそれぞれの進行形・完了形・完了進行形が一覧表になっている。
安価な小冊子ともいえる本だが、その中に盛り込まれた内容は実に豊か。ただその豊かさ故に、教師が指導上において、あるいは学習者自身が自主学習において、本書を充分に使いこなせるようになるまでには、結構な時間と工夫が必要だと思う。使い方のコツや注意点などが教師間で情報交換され、それが「手引き書」のような形で実を結ぶといいな、と考えている。