フォーカシングを「追っかけ」る人向け
★★★☆☆
フォーカシングを勉強したことのある人が読むと、
「わかるなあ」としみじみ嬉しく思うのかもしれないが、
何も知らない人が読んだら、ファンの読みたがる「追っかけ本」。
身内の話、自己開示のような暴露本と誤解されるのではないかと危惧。
小説仕立ての展開に素直に引き込まれていけば、
少しばかり齧ったことがある人間が読むには、軽く楽しめる本か?
斬新といえば斬新。冗長といえば冗長。
その微妙に心の襞をなぞって、自分を触診していくような感覚が、
楽しくてたまらない人には、そのスタイリッシュな文体、仕上がりが
しっくり来るのかもしれない。
そんな新しいタイプの臨床心理本。
「池見教授の演奏するフォーカシング」から得られるもの・・・深すぎる
★★★★★
心理学という学問には多くの様々な学派の理論のアプローチがある。そして多くの場合その理論を疑う余地もなく教え込まれる。それらを知識として、歴史として頭に入れておくことは学問の在り方として否定はしない。しかし、「こころ」という目に見えないものは本当に例えば、フロイトの古典的精神分析のようにメカニズムとして分割できるものなのか?
目に見えないものを仮定することは人間の流動的で且つ繊細さの網の目を通り抜けることになりかねないのじゃないかと思う。
質問紙検査をはじめとする心理検査に対しても同じようなことがいえる。もちろん、それらは客観的にクライエントのパーソナリティや病態水準などを把握するために現在に至るまで批判を浴びながらも現在の精神医学や心理学に多大な貢献をしているし、否定をするわけではない。
池見教授も現在における両者の共通点や歩み寄りもこの本で明らかにしている。
だが、この本は「フォーカシング」のリスナーとフォーカサーの実際の「演奏」を通して何が一番心理臨床=クライアントとの関係において大切であるかを読者にわかりやすく紐解いてくれる。この「わかりやすさ」は、物語調で展開して読者に伝えるという従来の専門書にはなかった著者の独自の逆説的発想が見事に功をなしている。「演奏」なだけに読み手にも躍動感や感動が起こるのだ。フォーカシングと「今、ここ」の意味を知りたい方にはまさにとっておきの一冊である。
また、カウンセリングにおいても技法ばかりを教えられ、その具体的な背景に基づく根本的な意義を教えられていない、或いは意識していない心理職の方は多いのではないか?
技法論からの脱却=カウンセリング・マインドをこの本ではフォーカシングのライブセッションや小説も交えながらそっと教えてくれる。ベテランの臨床経験をもつ教授でなおかつ人間性心理学を代表する著名な著者だからこそ、その考察はかなり鋭く理にかなっている。心理学のあらゆる常識を覆されうる未だかつてない臨床心理学の革命ともいえる、「人のこころ」に携わる方は必読の一冊であると思う。人生観、人間観までも深く考えさせられる。私にとっては、作家顔負けの巧みな表現力で小説仕立てに展開する池見教授の感性ばかりではなく、むしろ著者の斬新且つ柔軟な理論考察が最も衝撃的であった。
読みやすいです。
★★★★★
カウンセリング界ではどうなのか知りませんが、、彼はフォーカシング界の王子さまです。おじさまですが。。内容は、カウンセリング関係の本なのに小説の要素が取り入れてあり、何となく物語風な感じで、読みやすいです。彼(池見さん)の恋愛模様も含まれていて、その女性との関係はどうなるんだろう。。そんな大人の恋愛観も感じさせてくれます。フォーカシングセッションのところどころに解説が含まれていて、フォーカシングのスキルアップに役立ちます。身構えずに読み進められるので、フォーカシングってなんだろう、という少しだけ興味のある方にもおすすめかもしれません。
一読の価値は、...充分すぎるほどある。
★★★★★
出張から戻ったところです。
新幹線の中で一読し、帰りで 3つのワークを読み直して...、
感じなおして...フォーカシングって、こんな風に進んでいくんだなぁ。
ワークの中で、フォーカサーは何を感じているのだろうか、その時に
リスナーの中では何が起こっていて、何を感じているのだろうか...
そんな世界に入っていけます。
技法の説明も、もちろん必要なのですが それ以前にあるもの、これに
気づかされます。
「マンガで学ぶ、フォーカシング入門」もあわせて持って行きました。
この本に書いてあることを感じながら、「マンガで...」を読んでみると、
自分の中に、すう〜ぅと入ってくるのがわかります。
もう一度、この本を読んで、ジェンドリンの「フォーカシング」と
「フォーカシング指向心理療法」を読み直してみようと思います。
...それから、ロジャーズに戻って、...それから、それから、岡田さんの
「実践"受容的な"ゲシュタルト・セラピー」に戻ってみよう...そう思います。
カウンセリングは、もともと『ひとのこころ』に接していくのですから
共通するところが多いこともわかります。
フォーカシングにかぎらず、『ひとのこころ』に接していこうとする
方々には、一読の価値は充分すぎるほどあります。
フォーカシングを知らない人へも
★★★★★
フォーカシングの本って、それをやらない人はあまり読まないのではないかと思う。でもこの本はフォーカシングのことだけでなく、カウンセリングについて、フォーカシングの立場から論考されている。精神分析との違いや共通点を著者なりの視点でまとめてあるのも面白い。第2章「『カウンセリングの呪縛』を解く」、第6章「ひとときの生を言い表す」は、カウンセラーとしてクライエントに何を援助すれば良いのかという大きなテーマについて、著者のこれまでの実践と経験に根ざした言葉で丁寧に書き表されている。
本書は、単なる概説書ではなく、著者自身が自分の生を言い表そうという試みでもある。血の通った言葉に触れるからなのか、私はカウンセリングを通して何をしたいのか、読んでいて自然に問いかけている自分に気付かされる。
フォーカシングを知らない人、あるいは技法論の先にあるものについて考えてみたい人にも、ぜひ読んでもらいたい一冊である。