K.O.bookstore
★★★★★
この本の理論展開は、ベートーベンの第9交響曲をモチーフにしている(うそ)。
第1楽章では荘重に、恐怖と希望というテーマで「ポスト冷戦」が語られる。
続く第2楽章では軽やかに「覇権後の世界」が示されるが、やや薄味だ。
そして緩徐楽章で「相互依存の世界」が魅力的な変奏曲として現れ、聴く者の心を強く引きつける。
しかし、第4楽章冒頭で以前の楽章の旋律が繰り返されるものの、低音弦によって否定されてしまう。ポスト冷戦やポスト覇権だけでなく、魅惑的な相互依存の世界も、現代社会を的確に読み取り、特徴づける言葉としてはふさわしくない。
「おお友よ、このような音ではない!/そうではなく、もっと楽しい歌をうたおう/そしてもっと喜びに満ちたものを」
低音弦の呼びかけに対して「新しい中世」というテーマが提示されると、これが歓びの歌として受け入れられ、「全てのひとは兄弟になるのだ」と高らかに歌われる。そして最後は自由主義的民主制・市場経済という「神」を称え、神に感謝し、感動的なフィナーレを迎えるのだ(大うそ)。