訳者の個性が強く打ち出された翻訳
★★★☆☆
ベルクソンにとっての哲学の「方法」をストレートに打ち出した「諸論」や、
他にも「可能性と事象性」や「哲学入門」など、いずれも密度の濃い著者の代表的論考を含む論文集。
彼の説く「直観」を理解するには本書の熟読は必須であり、またベルクソン哲学への導入としても理想的な書物である。
さらには、哲学一般に関する興味などはなくとも、真摯に物事を見、感じ、生きようとする人には是非とも手にとってもらいたい一冊である。
この岩波文庫版は以前同文庫で発表年代順に三分冊で出されていたものを一冊にまとめ、本文を木田元が補訂したものである。
本訳書の最大の特徴は、詳しくは巻末の木田元による解説に譲るが、訳語の選択が訳者である河野与一(及び何人かの弟子筋の人々)独特のものであることが挙げられる。
これを吉とみるか凶とみるかは人それぞれであろうが、個人的な印象を述べると、まだフランス語もままならない学生時代の私にとっては本訳書は決して読みよいものではなかった。(もっとも、あくまで訳語の選択に関してのことで、訳文全体としては実にこなれた優れた翻訳であることは言っておかねばならない。)
補訂を担当した木田元も、「解説」において河野にたいし惜しみない敬意を払いつつも、独特の訳語にたいしては疑義を呈している感がある。
購入の前に一度書店での立ち読みや図書館で借り出しをするなどして「解説」を読んでおくとよいかもしれない。
以上を考慮した上で安価な別の訳本をお求めなら、レグルス文庫版『思考と運動』(上・下)という選択肢もある。
もちろん、哲学書の翻訳としてはどちらも安価なのだから、両方を買ってもいい。
哲学的直観による最高の実践例
★★★★★
訳者である河野与一はベルクソンの述べていることを哲学の初学者が鵜呑みにするのは危険だと言った。しかし、構造主義、ポスト構造主義後の思想的不作時期からみれば、ベルクソンの思想は至極まっとうであるように見える。その自由論にしてもサルトルらの政治的な観点からのものに解消されてしまったようにみえるが、ベルクソンのほうが透明性が高くて、時代を超えていそうな気がする。
ベルクソンにとって哲学とは対象との知的な共感によって、その持続を認識することであった。直観によって、対象の生命を一挙に把握するものである。この本はそういうベルクソンの独創的な思想をわかりやすく説いた諸編で構成されている。中では「哲学入門」が秀逸だが、二つの緒論やラヴェソン論なども良い。河野与一の訳も全然古びていないのは驚くほどである。
哲学・科学の方法
★★★★★
『精神のエネルギー』に続くベルクソンの論文・講演集。
本作では人間の認識を吟味した上でいかに哲学・科学の方法を探究するかが問題になっている。
ベルクソンの他の著作と同様に文章は明快で読みやすい。哲学書に慣れていなくて読み通せると思う。
思考や認識について改めて考えさせられることが多いだろう。
興味がある人にはオススメ
★★★★★
興味がない人にとっては
退屈かもしれませんが、
とても興味深い本です。