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新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)

価格: ¥770
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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『坂の上の雲』の「六分の運と四分の運」 ★★★★☆
 本作は、戦国時代に四国を制覇した武将・長曾我部元親の息子・盛親の生涯を描いた作品。 
 読んでいる時、読了後に思ったことは、結局運がなかった二代目の典型だということ。

 盛親の不運はやはり、長曾我元親という偉大なワンマン社長の元に産まれてしまったということだろう。
 そして元親がギリギリまで実権を持ち続けたということ。
 おかげで流されるままにしか生きることができず、運がないまま生涯を閉じてしまった。

 しかしこう思った時、ある言葉を思い出した。
 同じ司馬遼太郎の『坂の上の雲』に書かれていた「六分の運と四分の運」という言葉だ。

 日露戦争に参加していた佐藤鉄太郎と梨羽時起が「なぜ日本は勝つことができたのか」と話しあっている場面がある。
 この時佐藤が言ったのが「六分の運と四分の運」という言葉だ。

 「六分は純粋な運、そして残りの四分は自分で切り開いた運」と佐藤は言った。
 盛親にはこの「切り開く運」がなかったのだと思う。

 元親が生きている時もっと活発に意見を言ったり行動を起こせば、権限の移譲ももっとスムーズに行ったかもしれない。
 関ヶ原の時でももっと積極的にいっていれば結果も違ったかもしれない。
 終盤にはその「切り開く運」を思い至ったが、それも遅かった。
 結局、決断力とタイミングが悪かったということだろう。

 しかし、これを書いている今疑問に思う。
 「自分にそれを言う資格があるだろうか?」ということだ。

 これをもっと堂々と声に出して言える生き方をしなければいけない。
 本書を読んでそう思った。
 

 
初期の秀作 ★★★★☆
司馬作品を読んでいていつも感服させられるのは、登場人物のキャラクター設定と台詞や仕草の描写の見事さです。実在の人物なだけに難しい事と思うのですが、史料を丹念に読み込み周辺状況に思いをはせた上でその人物の心情や行動を活写する技は天才としか思えない。例えば本作のクライマックスでの盛親と弥次兵衛の描写は、おそらくどんな文献を調べても「その時桑名一孝はこう行動した」という記述は無いはずです。しかし、読んでいる方は間違いなくその時の二人はこんな風に視線を交わしたに違いないと思える。よく「司馬史観」と言いますが、司馬さんの凄さは歴史だけではなくそこに生きた「人間」を見る洞察力ではないかと思います。本作は比較的初期の作品ですが後年の達人技とも言うべき諸作へ繋がる重要な一作と思います。
己の器を賭けて ★★★★★
四国の雄、長曾我部元親の息子、長曾我部盛親。

才はあるにもかかわらず、生まれる場所を間違えてしまった男の物語。

おそらく一兵卒や一武将であったならば、彼は才を発揮して人生を全うできたでしょう。
しかし、政治や権力に全く無関心な彼に国主の立場は重かったのでしょうか。
周りに流され、日和見、職務を半ば投げ捨てるような国主としては「凡人」にしか見えません。

しかし、流れに身を任せ全てを失った後、
初めて「自分とは何者か」の問いに答えを求め、大坂の役に身を投じる。
そこで初めて、生き生きとした盛親を見ることができました。
国主の立場では執りえなかった、最前線での采配、単騎駆け・・・

周りに流され続け、最後に初めて自分で行えた決断は死地に赴く事―――
それでも、惰性で平凡な一生を終えるよりも、自分の器を確かめられる事の方が、
彼には幸せだったのかもしれません。

「士は己を知る者のために死す」といいますが、国主である彼にとって
「知る者」の存在がいなかったのではないかと思います。
そして己を知る者とは唯一「戦」だったのではないでしょうか。
先入観 ★★★★★
長曾我部盛親って誰だっけ??
司馬作品だし旅のお供にちょうどいい厚さだし読んでみようか。
と手にしたのですが、1泊2日の出張中ポケットに入れて休憩中も読むくらい熱中しました。
物語の山場はやはり大阪夏の陣ですが、
そこに行くまでのストーリーも読み手を飽きさせません。
余韻を残すすばらしいラスト ★★★★★
長曾我部盛親のものがたり。

『夏草の賦』では、長曾我部元親は、将のとるべき道として、”貪婪”を信条としていた。本作の主役、盛親は、圧倒的にこれが欠落していたとし、時に見せる一兵卒のごとき武者ぶりは、将の器ではないと評している。元親が、天下を望みながら地の不運を嘆きつづけていのと対象的に、盛親は、将としての力量を計る場のないことに悶々としていく。

が、この平凡な気質の好人物が、長曾我部の世子としてのあるべき姿に逡巡し、ついには天に己の才能(うつわ)を賭けようと決意するに至っては、武将としての清々しさを感じる。大阪夏の陣で見せる、藤堂高虎戦の盛親の采配は、今や敵味方となった旧臣下の見守る中で輝きを見せていく。特に、敵将となった、めのと子、桑名弥次兵衛と戦場での邂逅は、胸をうつ。

歴史小説は、史実としての結末がわかっているだけに、魅力的な登場人物の最期を読むのがしのびなくなることがある。本作は、盛親の高笑いとともに余韻を残す、すばらしいラストと思う。