戦争の話を聞かせてくれませんか
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この書物には14の告白が収められている。冒頭の「イ号潜水艦」の語り手である野口慶三氏は日露戦争直後の1905年、日本海軍が「海軍潜水学校」を設立した当初同学校に入学し、その後の生涯を潜水艦と共に送った人物である。やがて野口氏は「ディーゼルエンジンの神様」と呼ばれ数十隻の潜水艦のエンジンを整備し、同時に多くの作戦に参加して生と死の狭間を過ごした。戦後、B級戦犯として東条英機等と共に巣鴨で審判を待っていたがアメリカ輸送船の船長等の供述書により奇跡的に釈放された。その後野口氏は数十年間、口を閉ざして戦争に関し一切語らなかったが、死の直前、主治医であった著者にその一部始終を語って世を去った。
第三話「削り取られた日本」 盧溝橋事件直後の昭和12年7月15日、九六陸攻爆撃機二〇機の大編隊は蒋介石国民政府のある南京を目指し九州の大村基地を飛び立った。この日本海軍最初の渡洋爆撃に搭乗整備員として参加した渡部貞雄氏は、占領後、中国の町で巨大なコンクリート製の地球儀を見た。しかしその地球儀には日本列島は存在しなかった。あるはずの部分は削り取られて、10センチも凹んでいたのである。
第六話「さまよえる衛生兵」は、負傷した多くの兵士を青酸カリで安楽死させ、廃坑に隠れ、白骨が積み重なるジャングルを飢えて敗走した筆舌に尽くしがたい凄惨な戦争・・。
第7話は「満蒙開拓少年義勇軍」に参加し、やがて反乱を起こした石井恒夫氏の告白。
・・・・苛烈な体験を胸の奥深く秘めて生きてきた人々が、その記憶を、今、語り伝えようとしている。