「いかさま賭博」は本書で唯一気に入った話。私がセイント物のファンだから言うのではない。いかさまポーカーがテーマの軽い作品だが、二転三転の化かし合いがとても楽しめた。
「オッターモール氏の手」は、エラリー・クイーンら米国ミステリー界の大御所たちが1949年に選んだベスト短編「黄金の十二」の堂々の第1位に選ばれた作品。当然大いに期待して読んだが…文章はやたらと回りくどくてウンザリするし、プ!ロットも大した事ないし…どうしてこれがそんな傑作なのか、全然わからない。
ヘミングウェイは、ドライな文体と内容で、その後のハードボイルド・ミステリーに大きな影響を与えたという。ミステリー史的には価値があるのかもしれないが、この「殺人者」そのものは実にあっけない話だった。
「疑惑」も「黄金の十二」に選ばれた一品。悪くはなかったが、同じ毒薬を扱った話なら、クリスティーの「事故」の方がずっとあざやか。
以上、総じて期待外れだった。ミステリー史の勉強ならともかく、読んで楽しむだけならあまりお薦めしません。