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世界短編傑作集 5 (創元推理文庫 100-5)

価格: ¥693
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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カー作品が読めて満足です ★★★★☆
1935年から1950年までに発表された
9短編&1論文を収録した推理作品集で、
各作品の冒頭には、編者の解説付き。

私にとって本書の注目は、
【見知らぬ部屋の犯罪】(カーター・ディクスン)で、
本作は本書に収録されているため、
同文庫の「カー短編全集」から除かれてしまっているもの。
「アパートの一室が、発見された死体ごと消失する」という
印象的な謎の本作は、
解決の糸口となる事象が現在ではありきたりとなっていましたが、
カーの魅力を堪能できる作品です。

最後の収録作品、【黄金の二十】(エラリー・クイーン)は、
今では古典といえる短編10、長編10を紹介した論文ですが、
1941年発表とあって、
これ自体が「推理小説の歴史」そのものといった趣があります。

それ以外の作品の感想は…。

【黄色いなめくじ】(H・C・ベイリー)
子どもの異常心理をじっくり描写する、
印象深い作品でした。
題名の意味も面白い。
【クリスマスに帰る】(ジョン・コリアー)
ショート・ショートらしく、
題名の意味が明らかになる、
ひねりのきいたラストは、見事。
【爪】(ウィリアム・アイリッシュ)
冒頭解説で、
オチに気づいてしまう方もいらっしゃるのでは。
この作者の長編とは異なる作風だと感じました。
【ある殺人者の肖像】(Q・パトリック)
少年の犯罪心理の恐怖が感じられる作品。
被害者の心理も興味深い。
【十五人の殺人者たち】(ベン・ヘクト)
医師たちの秘密の会合で話し合われていたこととは?
結末はとても好印象。
【危険な連中】(フレドリック・ブラウン)
登場人物二人の緊迫した心理的葛藤。
この作者らしいストーリー展開でした。
【証拠のかわりに】(レックス・スタウト)
ネロ・ウルフものを初めて読みました。
探偵の人物造型は、やはり強烈。
事件そのものより印象深い。
【悪夢】(ディビッド・C・クック)
短編のスリラー映画を観ているような味わい。

「傑作集」の中の代表作 ★★★★★
「世界短編傑作集」シリーズの第五弾。現在に一番近い作品集なので、感覚的に現代人に一番合うのではないか。

ベイリー「黄色いなめくじ」の粘着質な嫌らしさ。こういう作品は、旧来のミステリには無かったのではないか。そして、カーお得意の不可能状況を描いた「見知らぬ部屋の犯罪」。パトリック「ある殺人者の肖像」、ヘクト「十五人の殺人者たち」も水準以上だが、何と言ってもアイリッシュ「爪」が際立っている。この作品は、良く味わって下さい、としか言えない。

ミステリの原点とも言える「短編」の傑作を集めると言う本企画は、ミステリの歴史を辿ると言う意味で成功していると思うし、その中で本作は傑作を集めた代表作だと思う。
1935年から1950年までの短編傑作集 ★★★★★
◆「爪」(ウィリアム・アイリッシュ)

  骨董商ウェイリン・ハミルトンの店で、強盗殺人が起きた。
  現場には、現金の入った箱を開ける際に剥がれたとおぼしき犯人の爪が発見される。

  この物証により、犯人の割り出しは容易だと思われたが……


  追い詰められた犯人の決死の決断に、しばし呆然。

  乱歩も書いてますが、今後レストランでシチューを食べる度に、
  この小説が頭をよぎりそうで、ちょっと怖いです(w



◆「見知らぬ部屋の犯罪」(カーター・ディクスン)

  ほろ酔い気分で、アパートの自分の部屋に帰ってきたデナム。

  しかし、室内の調度や装飾品が異なっていることから部屋を間違えたと思った
  彼は、急いでその部屋から出ようとするが、そこで死体を発見してしまい……


  類似した二つの部屋を犯罪に利用する作例は多くありますが、これもその一つ。

  本作では、ミステリにおいてよく扱われる、ある身体的障害がポイントとなります。
  それが出てくる時は、細かい描写も、いい加減に読み飛ばせません。



◆「十五人の殺人者たち」(ベン・ヘクト)

  一流の医者たちが三ヶ月ごとに集まり、その間に犯した、
  医学上の殺人罪を告白する会合を舞台にした話。

  新入会員の懺悔に、ある企みがあり、結末では、
  思いがけず、爽やかな読後感を味わえます。
  
短編の醍醐味 ★★★★☆
掲載作品:ベイリー「黄色いなめくじ」、ディクスン「見知らぬ部屋の犯罪」、コリアー「クリスマスに帰る」、アイリッシュ「爪」、パトリック「ある殺人者の肖像」、ヘクト「十五人の殺人者たち」、ブラウン「危険な連中」、スタウト「証拠のかわりに」、クック「悪夢」の9編。

前に読んだ「4」には失望したが、この「5」は格段におもしろかった。なぜだろう?「4」は1930年前後、「5」は1940年代の作品を主に集めたものだが、時代の古さ新しさはさほど感じなかった。むしろ、短編小説の性格が時代によって変化したのかもしれない。つまり、単に長編を短くしたものではなく、ひねりを効かせた独特の小説としての短編のスタイルが、1940年代頃に確立されていったのではなかろうか。

実際「5」には短編の!醍醐味を満喫できる作品が多かった。「クリスマスに帰る」は10ページ強のショート・ショートで、最後の数行での逆転が実に鮮やか。「危険な連中」も約20ページのショート・ショート。緊迫した内容ながら、読んでいて思わず笑ってしまう楽しい作品。「十五人の殺人者」は、患者を誤診で死なせて平然としている医者たちを"殺人者"にたとえた、皮肉たっぷりの話だが、一転してさわやかなオチが印象的。その他、どの話も水準以上で、楽しめた。