前に読んだ「4」には失望したが、この「5」は格段におもしろかった。なぜだろう?「4」は1930年前後、「5」は1940年代の作品を主に集めたものだが、時代の古さ新しさはさほど感じなかった。むしろ、短編小説の性格が時代によって変化したのかもしれない。つまり、単に長編を短くしたものではなく、ひねりを効かせた独特の小説としての短編のスタイルが、1940年代頃に確立されていったのではなかろうか。
実際「5」には短編の!醍醐味を満喫できる作品が多かった。「クリスマスに帰る」は10ページ強のショート・ショートで、最後の数行での逆転が実に鮮やか。「危険な連中」も約20ページのショート・ショート。緊迫した内容ながら、読んでいて思わず笑ってしまう楽しい作品。「十五人の殺人者」は、患者を誤診で死なせて平然としている医者たちを"殺人者"にたとえた、皮肉たっぷりの話だが、一転してさわやかなオチが印象的。その他、どの話も水準以上で、楽しめた。