不可能犯罪オンパレード
★★★★☆
カーの短編集の第2巻。
表題作の【妖魔の森の家】は、評判が高い作品ですが、
実際によくまとまった傑作です。
妖魔の森といわれる場所に建つ家で、
密室状態の部屋から少女が失踪、
1週間後に姿を現します。
失踪の間の記憶がないという彼女が、
成人後、再び同じ家に行き、
またもや密室状態から忽然と姿を消してしまうというストーリー。
後の作家の作品にこの密室トリックの応用例がありますが、
今読んでも、なかなか衝撃的。
伏線も良く張り巡らされています。★5つ。
以下、他の収録作品へのコメントです。
【軽率だった夜盗】
盗難事件に付随して起こった殺人事件。
フェル博士が犯人に仕掛ける罠が面白い。★4つ。
【ある密室】
典型的な密室殺人。
トリックも典型的で、平均的な仕上がり。★3つ。
【赤いカツラの手がかり】
服を脱いで殺された女性の謎。
これも平均的な仕上がりか。★3つ。
【第三の銃弾】
160頁ほどの中編。
密室状態で判事が射殺され、
部屋の中には拳銃を構えた青年が立っていた。
ところが、死因となった銃弾は、
部屋にはない別の拳銃から発射されたことが判明し・・・
という不可能犯罪。なかなか巧妙なトリックで、★4つ。
表題作「妖魔森の家」は世界最高傑作の短編
★★★★★
読者の興味を惹く事件導入、悪ふざけとしか思えないファース、そして人間消失、読者の一枚二枚上を行く解決、読者を徹底的に叩きのめす伏線。
まさに脱帽するしかない。巧みなミスディレクションにより、読者を真相から遠ざけてしまう手腕たるや見事。
しかし何より、この小説の神髄は初読より再読の方が驚いてしまう点にある。
再読すると、これでもかという証拠の提示に、自分のボンクラさを味わうこと必至。
4〜500頁もの中に、僅かワンセンテンス程度の証拠をひっそりと提出して、フェアプレイなどとぬかすエセ本格作家に見習ってもらいたい大傑作。
これ以上の推理小説短編があるならぜひ教えて欲しい。
永久不滅の短篇
★★★★★
やはり「妖魔の森の家」はすごいです。様々なアンソロジーで必ず収録されるのも納得がいきます。
森の中の家から一人の人間が消失する…
カーはこの謎を極めて合理的解決法によって成り立たせました。
日本では鮎川哲也先生がよく似た「赤い密室」を書いています。
「妖魔の森の家」――カーの短編最高傑作
★★★★★
■「妖魔の森の家」
鍵のかかった部屋から姿を消し、その一週間後
に鍵のかかった部屋に出現した少女ヴィッキー。
それから二十年経った現在、再び彼女は密室状況のバンガローから姿を消す。
ヴィッキーの従妹のイーヴ、その恋人の外科医ビル、そしてヘンリー・
メリヴェール卿(H・M)の三人が、ヴィッキーとともに、二十年前の事件
があった別荘に行った際に起きた事件だった。
捜索もむなしくヴィッキーは見つからなかったのだ
が、帰宅したH・Mのもとに、彼女から電話があり……。
序盤にH・Mは、バナナの皮で派手に転ぶのですが、そうしたコミカルな
演出が、後に重要な手がかり(防水布の切れはし)を発見する際の伏線
になっているというのが秀逸。
のみならず、登場人物の言動から窺える各人の性格やなにげない描写
(浴槽にしたたる水の音)にも、真相を導き出すための伏線が縦横に張り
巡らされているのです。
消失トリック自体の実効性に関しては、首を傾げざるを得ないですが、
魅力的でムードたっぷりの謎と、やるせない真相との対照が鮮やかな
カーの短編最高傑作です。
不可解な事件の結末は驚きです。
★★★★★
ある日突然の少女の失踪。神隠しのような 不可解な事件。
だが なんと 少女は・・・・。
結末はどうなるんだろうと ドキドキしながら読んでました
最後は大マジックの種明かしをみせられたような気分でした。
でも その種明かしとは 想像もつかぬものでした。
カー 作品は驚かされることが多いですが、これは逸品だ
と思います。