本書は、どことなくとっつきにくく難解なイメージを抱かせるデリバティブというものの考え方を理解するための解説書である。特に、大枠をつかむことを目的として、金融理論ではなく、誰もがもっている一般常識で理解できるように、身近な題材に置き換えて説明している点が特徴的である。具体的には、まず魚をリスク対象にした幻のデリバティブ商品「はまちスワップ」の紹介から始まるプロローグから読者をデリバティブの世界へと誘っていく。そもそも金融工学は線形代数や集合・位相、関数分析といった高等数学をはじめとした幅広い学問と関連しているのでマスターすることは容易ではないが、近寄りがたい金融工学の世界をのぞき見する1冊としておすすめである。(君野未来)