辛辣極まる行政批判。しかし「解体」を通してこそ「再生」がある
★★★★★
日々公共サービスに従事することを本業とする公務員にとって、実に辛辣極まる本である。
冒頭、「裏金」「職員厚遇」「天下り」等の「政府による私益追求」が辛辣に指摘される。そしてそのような「政府による私益追求」に対して「民による公益追求」が対比され、本論で具体的に「民が担う公共」が提示され、民間セクターによる公共の形成が強く主張されている。専業の公務員に対する不信任として、これ以上厳しいものはあり得ない。「おまえら、要らんぞ」「代わりは民間セクターでできるぞ」という、この上ない批判である。
だからこそ、公務員は本書を読むべきであろう。そして、我が仕事を振り返ってみることだ。評者は専門職としての公務員が不要となることはあり得ないと信じる者であるが、「解体」を通じてこそ「再生」があるのだと信じる。
豊富な事例紹介で行政と民間の役割を見直すべく問題を提起
★★★★☆
行政改革を進め政府をスリム化する流れの中で、「官から民へ」の流れが叫ばれ、実行に移されてきているが、本書は民間を活用することによる効果を、具体例を豊富に紹介しつつ論じている。具体例が豊富ゆえ、読みやすく、実際の効果や課題(本書では失敗例も紹介されている)が理解しやすい。民間や個人の役割が変化していくことで、現在の行政のあり方を「解体と再生」とのタイトルにあるとおり、新しいものに見直していく必要性を訴えている。
また、第6章〜8章でCSRおよびSRI、社会企業の役割を、行政の役割を民間が担う動きとして論じられている。この部分は新鮮。それに続く第9章ではNPOの役割についても論じられている。
前半は豊富な事例が貴重。後半はCSRやNPOといった新たな切り口から行政のあり方を論じており、公務員など行政に実際かかわる人より、いろんな人が一市民として読み、自分も公共のために何ができるかを考えてみるのに有益な書だと思う。