実践を通じて語られる、元気が出る「農」の再生
★★★★★
熊大名物「農村社会学者」徳野貞雄氏のこの本は、とことん実践的だ。
例えば、「都市農村交流のターゲットは他出している身内から」として「出て行った娘を実家に通わせる」作戦を提案。「娘」といっても人生経験豊富な熟年、家と実家を行ったり来たりしてくれる時間もあるしカネもある。そういう形で農村に交流人口を増やしていくのが結局近道、という議論には説得力がある。そもそも子や孫が寄りつかない農村に、都会の他人が来たがるはずがないではないか。
そして一方で、社会学者としての慧眼が光る。
日本のムラは、単なる自然共同体ではなく、その気になれば通潤橋建設のような一大プロジェクトを完遂することのできる「地域機能共同体」であった。このムラの「機能的共同体」としての性格が、日本の企業組織の原型となったのだ、という指摘には、「はっ」とさせられた。
極めて具体的で面白く、元気が出る本。農村(ムラ)の再生は、都会(マチ)の再生と表裏一体であるということが素直に理解できる。多くの方にぜひ読んでいただきたい。
農村現場の実態に即した現実的な活性化対策を説く
★★★★★
「農に関しては無関心などうしようもない消費者」と「食べ物は命の源であるとかいっているけれども現実は餌、安ければ良いと主思っている消費者」が4分の3を占めると、調査により消費者を具体的に分析しP.91、日本の消費者が化け物化しておりこうした消費者の意識をいかに変えていくかが重要p.92と指摘。また、農村は「農地の集積空間」ではなく、「農業と関係している人間の生活空間」としてとらえていかなければならないp.94、人が一日しか農村に滞在しない都市農村交流p.116よりも、具体的に「あなた自身の家族や親族と、あなたの住む地域社会と故郷を見直して行動する」作業を始めるべきp.139であり、都市農村交流のターゲットは都会から離れられない団塊世代の定年帰農に期待するのではなくp.165、他出している身内から考えることp.164、農村から出て行った娘を農村の実家に通わせるp.167ことが有効と説く。いま農村で暮らしている夫婦がラブラブになることで農村に嫁がくるようになるp.157。田舎にも給料は安いが仕事はあるp.172、農村では都市より安い給料でも豊かな生活がえられるp.173のだから、若者が一度は農村から出て行っても帰ってこられるような仕組みをつくるべきp.176。農村の現場に即した現実的な活性化策に目を開かれる。おススメ。
ムラに住む私としては
★★★★★
農村社会学の第一人者である徳野教授の新著。
氏の強烈な講義を聴いて今農村に住み農業を生業とするため努力しているが、生半可な気持ちで農業はできないし、農村生活はできない。
「田舎暮らし」を夢見る方は前もってこの本で軽く頭を叩かれるのも良かろう。
しかし希望は農村にある。ニートも引きこもりもバツイチも農村なら生きていく場所になれる。