【復刻版の原本】
　この電子書籍は、以下の書籍の版面を複写し、シミ、ヤケ、活字のかすれ等をできるかぎり修正し、読みやすくした復刻版です。
　佐藤春夫『春夫詩抄』（岩波文庫　昭和25年10月10日発行第9刷改版）
※　島田謹二氏による解題、奥野健太郎氏による「車塵集」解説は、収録しておりません。ご諒承下さい。
※　端末によって見え方が異なる場合があるほか、復刻版の版面イメージの確認のためにも、無料サンプルをダウンロードし、確認の上でご購入下さい。なるべく大画面のタブレット、パソコン等でご覧になることをお勧めします。

【解説】
　原本のタイトルは、「春夫詩抄」です。「詩抄」ながらも、佐藤春夫の詩のほぼ全作を収録しています。代表的な『殉情詩集』や、唐・明の時代の女流詩人の作品４８編を編集・訳詩した「車塵集」も含まれており、充実した一冊です。
　以下は、春夫による序文です。
「本集は名は紗であるが、実は全作の大部分を收録した。初期の習作を故意に削除する以外には近作の多くをも加へて全作を網羅し、傍ら異本の三四種にも及ぶものの決定版を作って置かうといふのが本版の当初の目的であった。異本整理の一事は校正者の努力によってほぼその目的を達成し得たが、全作の網羅はこれを努め、本集によってはじめて採録したものも三四ならずあるが著者の疏懶の結果「殉情詩集」の一半、詩文集「わが千九百二十七年」中の諸篇や小園歌をその主要なものとして、尚幾多の遺漏があるらしい。未發表の諸作とともに散侠の諸篇が残らず編纂されるのはもとより作者の本懐であるが、この機を逸した今日や果してその日がふたたびあるや否やは作者も知らぬ。かげろふにも似たわが詩の命を．われと得はからぬがためである。昭和ひのえ子の歳、都に消之残る雪の窓にのぞみて　　春夫しるす。」