自分自身に至る回路としての音楽
★★★★★
原書は『古楽とは何か』とほとんど同時期の発行で、内容としては同書と重なりつつ、モンテヴェルディ、バッハ、モーツァルトの解釈の細部で敷衍している。作品の解説が詳しい。思うに、あと15年早くこの本に出会ってたら、自分の人生はもっともっと充実してたであろうことが惜しくはある。音楽をめぐって、ここまで自由さを感じさせる書籍はない。アーノンクールの音楽の研究手法は着実、本質的なもので、その気になりさえすれば、文学、哲学、建築、自然科学、ビジネスのどの領域でも応用可能な、人生を豊かにし、人間が自分の高貴な使命を獲得していく、精神の栄光に溢れている。