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現在と未来―ユングの文明論 (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,020
カテゴリ: 新書
ブランド: 平凡社
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集団心理を軸にした現代社会論 ★★★★★
 ユングが第二次大戦中・戦後に残した現代社会論考を収めた著作。「現代史に寄せて」という題の文章が全五篇中三篇、インドについての小文が三篇、そして「現在と未来」と題した論考が全文収録。内容的には、第二次大戦にいたるドイツでの全体主義体制の成立とその行状について心理学の観点から解釈と理解を試みる、というのを「現代史に寄せて」で展開し、インドについての思索を挟んだ上で、先の「現代…」での問題意識を「現代と未来」でさらに発展させる、という流れになっている。

 読んでいくと、例えばエーリッヒ・フロム「自由からの逃走」での社会心理学的分析と似通った部分があり、あるいはアドルノ/ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」に通じる現代社会批判があり、ハンナ・アーレント「全体主義の起原」を補完する深層心理の洞察もある。もちろんこれら全ては同じ現象への危機意識から生まれ出ているのだから共通するところがあるのは当然だが、これらの著作で明らかにされた問題性は今に至って解消されたわけではなくただ隠蔽されているに過ぎないというのは、これらの著作を読むごとにはっきりしてくる。

 また、ユング自体の論について思ったのは、その主張の中でとても重要な存在とされる個人/個性というのが固定してあるのではなく、内部・外部からのさまざまなはたらきが交錯する一つの場として構想されていることの独特さだ。人間を固定したものとして捉えるのは個性の反対語である「典型」によるもので、世間で言われる「個性」とは実は「典型」に他ならないということを最近思っていたので、ここでの議論には納得した。さらにユングは個性を歴史的なもので一回性のものだと語り、その個性を充実させるためには無意識を等閑視せずに自己認識を深めることが必要だといい、宗教の果たす役割が大事になるという。ここでの宗教は教派教団の活動とは関係がなく、無意識と一対一で直面するための媒介として考えている。

 一方で集団心理の機微についても詳しく書かれていて、現在の状況に対して示唆に富んでいる。現在社会論としての鋭さがある一冊。
現代史の謎 ★★★★☆
 「ドイツにはいつかのセクトが起こり 幸いなる異教に近づくだろう 捕われた心と僅かな収入りは 真の十分の一税を払うべく帰されるだろうーノストラダムスの予言1555年」とのっけに引用されている。そして第二次世界大戦に突入するドイツの問題が扱われている。

 ゲルマンの神、ヴォータンがドイツ人の無意識に復活して来たと当時の臨床からユングはいう。ニーチェのいう、金毛獣なのだ。そしてナチスへ至り破滅に至る様が、「破局のあとで」というタイトルの文章で語られている。