何がわからないかがわかり、繰り返し読む価値がある。
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表紙のPOPなデザインを裏切るかのような、充実した内容である。「病歴から80%診断できる」「感度・特異度」「説明モデル」と現在の鍼灸師のどれくらいが、これらの言葉を知り、理解し、日々の臨床に根拠をもって臨んでいるのだろうか。これらは、「患者中心の医療」を実現するために欠かせない重要なファクターである。問診ではなく、「医療面接」によって丁寧に「病歴を聴く」ことで、従来からの「所見中心」の臨床を変えていく。
何故「所見」では不十分なのか、なぜ「病歴」なのか。本書を読むとその理由がよく理解できる。本書の参考文献は鍼灸関連のものはなく、医学誌ばかりであり、そのデータのほとんどが
「根拠」に基づいている。また著者は治療面だけでなく、今後の医療界において、医療人たる鍼灸師がどうあるべきか、社会と患者のニーズを見誤っていないかということを危惧している。今後の鍼灸界において、志のある鍼灸師が本書を読み、何がわからないかがわかる著作であると感じさせられた。「病歴を聴くと治療がわかり、自分がわかる」かもしれない。