訳は些か読み難く、多分ラヴクラフトの邦訳を意識してのことだろうが、それまで一人称を「おれ」などと言っていたかと思うと、急に妙に堅苦しくおどろおどろしい文体を持ち出して来たりする。ハワードがよく好む簡潔で粗野な言い回しを、如何にも古々しくてございと云った厳めしいイメージと調和させるのに苦労した様なのだが、好意的に読んでみれば、それだけ他の邦訳には見られない奇妙な混淆した迫力を生んでいるとも言える。
取り敢えず現代怪奇小説の古典と呼ぶべき作品が幾つも収められているので、このジャンルの愛好家ならば読んでおいて決して損はない。