この本は材料力学の参考書『親切な材料力学』の３分冊の第３番目の『多軸負荷とひずみエネルギ』です．『親切な材料力学』の第６章～第８章までの部分を本にして部分的に読みやすくした本です．豊富な例題の詳しい解答を読んで理解するだけで演習問題を解く以上の効果があります．
　この本はわかりやすい参考書です．ここに記載されている中身は著者の講義で説明されている内容で，一般的教科書で省略されている式の導出過程も記載し，ふんだんに絵や写真を使って説明しています．例題に関しても，座標軸を変えたらどうなるかや，別の解き方で解いたらどうなるかという違う観点から見た解き方も記載しています．この本はいわば教科書ガイドです．期末試験で間違えやすい箇所の説明もあります．

　この本を理解するためには物理の力学や微分積分，ベクトルや行列について基本的内容程度知っていれば十分です．読者の対象は工学部の学生ですが，工学部を出て材料力学を再度勉強し直す方にもよいでしょう．

　機械工学において，材料力学は機械設計に必要不可欠な基礎ですが，解説に主眼を置いた本はほとんど見当たりません．

　この本の部分では，多軸負荷のわかりやすい説明，モールの応力円について座標軸の取り方の数学的な詳細な説明，そしてモールの応力円を用いた主応力，主せん断応力の説明があります．モールの応力円の説明はどの本にもない画期的なわかりやすいものです．カスチリアノの定理を用いた説明では間違えやすい問題で丁寧に説明しています．

【どういう読者が読むべきか】
　期末試験や大学院入試，資格試験などの試験対策
　理工学部出身だけど材料力学を履修していないで業務に必要な技術者
　多軸負荷が良くわからない
　モールの応力円が良くわからない
　主応力がよくわからない
　カスチリアノの定理の使い方が良くわからない

目次
第６章 組み合わせ負荷
第７章　ひずみエネルギー
第８章　座屈と骨組構造


著者：東京工業大学　機械系　教授　轟　章