どうせ読むなら英語版
★★★★☆
邦訳版より安価。論理的な英語で単語も難しくない。写真や図版が多い。従ってすらすら読める。内容に関しては、「人生そのものが実に旅なのである」という三木清ばりの論考を期待すると肩透かしということになるかも知れない。肩の凝らないエッセイという方が当たっている。もっとも、「旅に出かけない方が本質的な旅ができるかもしれない」など、最初から最後まで飽きさせない。ただ、大自然の見方など、お国柄の違いかなというところもある。
なぜ旅行するのかという疑問を感じていたらぜひ一読を。
★★★★☆
~時々、何処かへ行きたくなることがある。何故なのかはわからないが、本書は、その気持ちに答えてくれるエッセイだった。旅する目的は、十人十色だし、そのときの気持ちでかわるものだから、ぴったりあうエッセイは無いけれど、本書は、私にとっては、感じるところが多かった。哲学者,画家,探検家などなどの足跡を追ったり、彼らの気持ちを考えて、著者の旅~~行の様子が描かれている。~
旅と文体
★★★★★
はっきりいって、私にはすばらしいエセーの哲学だと感じられた。何を試みているかといえば、旅の試論なのである。哲学と人が聞くと、なにやらお堅い専門用語が出てくるもんだと思いがちだが、そんなものばかりが哲学ではない。旅を哲学することが、自分の旅の経験や人の旅についての経験から思索することから出発するものであり、同時にそれは自他の直接間接経験が絡み合って抜き差しならぬものになってしまうことを、著者は意図的に構築してゆく。旅の文体とは文体の旅でもあり、われわれが訪れる処女地の経験も、何らかの既知によって解体にさらされているのである。そうしたときにあなたは本当に自分だけの旅といえるものを敢行できるのだろうか。旅を哲学することはどういうことなのか、この本を読んでじっくり観想を巡らせて旅するといいだろう。
期待より外れたので批判的かも
★★★☆☆
哲学者に関する本から馴染んでいる人なので読んでみた。Eホッパーの絵の辺は個人的には新鮮であった。今回は以前より全体としてはやや精彩を欠いたような印象。
9章に亘って文人・画家に関連する博覧・引用、関連ある人がペアで絡むという意匠は余り真似の出来ないことかもしれないが、全てこなすのは至難と見えた。著者自身の旅・生活スペースなども出てきてそれほどの話題とも思えなかったのだが。原題は「旅行術」である、著者の言いたい部分はプルーストの頃から付き合っているせいか、読後旅心は余り影響は受けなかった。所謂哲学者は出てこない。
自分の旅に磨きを掛けるために
★★★★★
哲学なぞとうたっているから、珍しいもの見たさや気晴らしの旅行で満足している人がこの本を手にすることは少なそう。たしかに、哲学者である著者が、旅人として著名な西洋人を引っ張り出してきて、旅のすばらしさを体験させてくれる本であって、いわゆる旅のノーハウ本ではない。パック旅行に限界を感じている人または自分の旅行術をもっている人には、こんな旅もあるのだぞ、という著者らの主張を考察し、自分の旅に磨きを掛けるために是非読んでほしい本。どんなふうにして磨きを掛けるかといえば、批判的に読むことなどはその一例。すなわち、旅の写真について引き合いに出しているけど、ちょっと違うんじゃない?写真だって、美しいものを感じ取りそれを切り取らなきゃ、写真じゃない、ファインダーをのぞいてシャッターを切ればいいってもんじゃないよ、あなたやラスキンがおっしゃるスケッチや絵と本質的に違わないよ、などと。つまり、自分の旅を対置するってこと。
でも、珍しいもの見たさや気晴らしの旅行で満足している人にも、もっと違う旅もあるんだぞ、ということに気がついてもらう意味において読んでほしい本でもある。