サービス精神が特に働いているわけではないと思うが、2002年版とは著名作家の名前がずらり入れ替わっている。これは立て続けに二冊読む側にとって有難い。多くの好きな作家がより多く名を連ねいるというのが、アンソロジーの最良の楽しみではないか。
今回は大御所としては、ジェイムズ・クラムリーとエルモア・レナード。作品はやはりどちらもブラックで頼もしい。
クリストファー・クックの意外な面(一作しか読んでいないのだから何だって意外だ)が見られるし、如何にもといった観のジョージ・P・ペレケーノスならではの非情な作品や、無名な作家陣の思いも寄らぬ収穫に満ちてもいる。
新発見作家でぼくがとりわけ気に入ったのは、例えば、ブレンダン・デュボイズ、ロバート・マッキー、スコット・ウォルヴン、モニカ・ウッド。
しかし、この作品集の最大のぼくの興味は、あまりにも長い期間、翻訳小説の世界から遠くに行ってしまっていたウォルター・モズリイである。何とイージー・ローリンズのシリーズが『イエロードッグ・ブルース』でばっさり断たれてからの続編に当たるのがこれ。マウスの生死をめぐる前作直後、エタ・メイの物語であり、そこそこに衝撃的な作品なのである。ファン必読であろう。
なお全体に、2002年版に比較して、犯罪の暗い闇を突く作品が多いように思えたが、コナリーの趣味なのか、9・11を経験したアメリカ全体の持った時代の暗さなのか、それともただの偶然なのか。
また、現代よりも、アメリカのずっと昔を舞台にした物語、地方を舞台にした物語が多いのも、この作品集の特徴であった。これまた、果たしてコナリーの趣味なのか、偶然なのか。