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ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 新書
ブランド: 早川書房
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際立つのは、犯罪の暗い闇を突く作品群 ★★★★★
 同じアンソロジーの名シリーズをハヤカワが立て続けに出した。確かにDHCの出版は2001年で止まっていた。でも今になっていきなり二冊というのは、不思議だ。ぼくの4月は、結局この二冊を読むのに大半を費やすことになった。それだけじっくり読める二冊だったわけだ。

 サービス精神が特に働いているわけではないと思うが、2002年版とは著名作家の名前がずらり入れ替わっている。これは立て続けに二冊読む側にとって有難い。多くの好きな作家がより多く名を連ねいるというのが、アンソロジーの最良の楽しみではないか。

 今回は大御所としては、ジェイムズ・クラムリーとエルモア・レナード。作品はやはりどちらもブラックで頼もしい。

 クリストファー・クックの意外な面(一作しか読んでいないのだから何だって意外だ)が見られるし、如何にもといった観のジョージ・P・ペレケーノスならではの非情な作品や、無名な作家陣の思いも寄らぬ収穫に満ちてもいる。

 新発見作家でぼくがとりわけ気に入ったのは、例えば、ブレンダン・デュボイズ、ロバート・マッキー、スコット・ウォルヴン、モニカ・ウッド。

 しかし、この作品集の最大のぼくの興味は、あまりにも長い期間、翻訳小説の世界から遠くに行ってしまっていたウォルター・モズリイである。何とイージー・ローリンズのシリーズが『イエロードッグ・ブルース』でばっさり断たれてからの続編に当たるのがこれ。マウスの生死をめぐる前作直後、エタ・メイの物語であり、そこそこに衝撃的な作品なのである。ファン必読であろう。

 なお全体に、2002年版に比較して、犯罪の暗い闇を突く作品が多いように思えたが、コナリーの趣味なのか、9・11を経験したアメリカ全体の持った時代の暗さなのか、それともただの偶然なのか。

 また、現代よりも、アメリカのずっと昔を舞台にした物語、地方を舞台にした物語が多いのも、この作品集の特徴であった。これまた、果たしてコナリーの趣味なのか、偶然なのか。

このメイドさんには、萌えません。 ★★★☆☆
 殺人事件の謎解きに限らず、主婦の不倫、歴史を陰で操る謎の組織の存在を描いた「Xファイル」風と、ハードボイルから、ロマンスまで幅広く集めた20の短編の中から、特に面白く読めたと思えたのは、半分くらいでした。スリ生活の最後を飾る一日を描いた、クリストファー・クックの『スリ日記』は、ユーモアのあるドンデンが良く、タイラー・ディルツの『悪党』は、映画に出てきそうなチンピラの行動を淡々と解説風に描いており、痛さにリアル感があります。外国版『家政婦は見た!』を更に一歩進めた感じの、エルモア・レナードの『新しいメイド』は、ブラックなオチが素晴らしく。以上が個人的なベスト・スリーに入ると思います。また、犯罪やドラマと同時進行して、人種や地域性といったアメリカの雰囲気を伝える描写が、作品ごとの行間から伝わってくるようでした。