珠玉の短編をお楽しみあれ
★★★★☆
アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA)最優秀短篇賞を1990年から2007年に受賞した作品を年代順に収録している。MWA賞は、受賞者にエドガー・アラン・ポーの胸像が贈られることから「エドガー賞」とも呼ばれ、ミステリ界最高の栄誉とされている。
ウェストレイク、ローレンス・ブロック(2作品)、ダグ・アリン、アン・ペリー、ピーター・ロビンスン、S・J・ローザンはじめ16人による17作品が収録されている。舞台となるのはアメリカだけでなく、メキシコ、ハイチ、ヨーロッパに広がり、時代も現代だけでなく第一次世界大戦から第二次大戦下もあれば、中世にまで及ぶ。登場人物も私立探偵、泥棒、殺し屋から密猟者、吟遊詩人と多彩であり、おなじみの顔にも会える。ベテランの熟練したお手並みを楽しむのもよし、知らない作家との出会いを楽しむもよし。きら星のような個性を楽しみつつ、そこはかとなく漂う時代の流れを感じるのもまた一興だ。
1948年から1981年受賞作は『エドガー賞全集(上)(下)』(ビル・プロンジーニ編)、1982年から1989年受賞作は『新エドガー賞全集』(マーティン・H・グリーンバーグ編)としていずれもハヤカワ・ミステリ文庫から出されている。本著はその続編といえるが、日本独自で編さんされたものである。なお、2005年受賞作、ローリー・リン・ドラモンド『傷痕』は、版権の関係で収録されていない。
ミステリファンなら手元に置くべき1冊である。