般若心経は短い文章の中に、この世界の真理のエッセンスが込められている本当に素晴らしい経です。
短いがゆえに多様な解釈ができますので、多くの人たちが般若心経に何が書かれているのかを解き明かそうとしてきました。
にもかかわらず、その多くはまことに難解です。
言葉として分かりやすいものはあるものの、般若心経の解説としては的外れなものに感じられます。
般若心経の伝えたいことがきちんと解説できていない理由はただ一つ、お釈迦様の悟りの概念が欠けているからです。
般若心経は、お釈迦様の悟りを基礎にして書かれていますので、悟りの概念を欠いた解説では、何が書いてあるのか理解できません。
お釈迦様の悟りはまさに「空」にあります。
般若心経も同様、まさに「空」について書かれています。
「空」をこの世界で働いている力、すなわちエネルギーと解釈すると、お釈迦様の悟りも般若心経も実にたやすく理解できるのです。
お釈迦様は、精神論を語ったのでも、戒律を設けられたのでもありません。
お釈迦様は、私たちの中で、私たちの周りで、目には見えないけど間違いなく作用している力を見つけられたのです。
それを体験で知ることこそが悟りで、私たちが幸せに生きていけるたった一つの方法だと思われただけなのです。
だからお釈迦様は、すべての人に向かって悟りなさいと言われたのです。
仏教の目指すところは煩悩を退治することでも、善い行いをすることでもなく、ただ一つ悟りなのです。
ところが、悟れない多くの人たちによってお釈迦様の教えはいつの間にか悟りとはかけ離れたものになってしまいました。
こだわりを持つなと言いながら、多くの戒律が設けられ、あれをしてはいけない、これをしなければいけない、と矛盾していることが教えられています。
般若心経はそんな精神論や戒律とは無関係に、この世界についての真理が語られています。
「空」をエネルギーと解釈し、エネルギーの作用により認識できるものに変化したエネルギーを「色」と解釈すれば、般若心経の伝えたいことは実に簡単に理解できます。
自分が自分だと認識している自分は、本当の自分ではない。
本当の自分は、今この瞬間に自分を生かしている力だ。
それを知ったとき、人生は楽しいだけのものになる。
だからそのことを知りましょう。
般若心経には、そのことが分かりやすく書かれているだけです。
実に般若心経は、お釈迦様と同じ世界を見た誰かが、お釈迦様の教え通りにこの世界の真理を分かりやすく解説した、本当に素晴らしい経なのです。
本書は、著者の悟り体験をもとに、般若心経の伝えたかったことを分かりやすく解説しています。
悩みや苦しみを抱いているすべての人に読んでいただきたいと思います。