祝・名盤復活
★★★★★
待望のCD化。クインシーの「70年代前半A&M音源」はどれも名盤ぞろいだが、何故かこの一枚のみ長らくカタログ落ちが続いていた。アルバムの完成度では翌74年発表の“Body Heat”に劣るかもしれないが、本作には60年代からのアフロ=ジャズ路線と70年代後半のソウル=フュージョン路線が程良くブレンドされており、洗練されすぎないファンク風味も聴きどころ。
収録曲はR&B/ジャズのカバー曲に自作の映画・TVドラマ音楽をカップリング。アレンジに統一感を持たせていないので、よく言えばバラエティ感たっぷり、別の言い方ではやや散漫。とはいえ全曲クオリティは異様に高い。特にガレスピーの名曲[7]は8分42秒の長尺でソロ回しが延々と続く快演、もっと演って欲しい。
ミュージシャンも例によって豪華だが、ヴァレリー・シンプソンやトゥーツ・シールマンスなどの半レギュラー陣に加え、[6]には"three beautiful brothers"名義でビリー・プレストン、ビル・ウィザースそしてスティーヴィー・ワンダーも参加。リズム隊ではチャック・レイニーが代表作といえる名演を聴かせる。
なお今回のCD化ではマーヴィン・ゲイのデラックス・エディションなどで手腕を発揮したケヴィン・リーヴスがマスタリングを担当しており、ビニール盤を聴き慣れた耳にも違和感のない高音質化を達成しているのも嬉しい。未発表音源などのオマケは一切無いが、これはこれで見識か。
70年代後半〜80年代初頭の「売れ線クインシー」しか知らない人にも是非聴いていただきたい名盤の復活。さあ買いましょう。