大学入試、就職・転職活動、昇進試験、企画書、報告書、論文…。何かと文章を書く機会は多いが、そのための教育は決して十分とはいえない。作文と論文の違いがあやふやな人もいる。論文を書く機会に恵まれていたとしても、就職活動で自分を売り込んだり、会社で自分の主張をとおしたりするための文章を書くとなると、どうすればいいのか戸惑うのが現実だ。
本書は、「受験小論文の神様」樋口裕一が学生にも社会人にも役立つ文章のテクニックを、具体例、設問などを用いて解説した本。受験生に論文の書き方の指導をしている著者が書いているだけに、内容は実践的。制限字数をどう配分するのか、どんな構成にするのか、アピールするにはどうすればいいのか、などが詳しく書かれている。社会人にとっては例文の内容が少し物足りないかもしれないが、文章術の本だと割り切れば問題はないだろう。
情報量そのものよりも、得た情報をいかに上手に分析し、アウトプットするかが問われることの多い社会人の世界。「たかが文章」で損しないためにも、ぜひおすすめしたい1冊。(土井英司)
ホンモノの実践本
★★★★★
「なぜ試験前に出会わなかったんだ!」
今年度の教員採用試験は落ちてしまったが、試験前に、この本に出会って入れば、もう少し善戦できていたであろう。
上手な文章作成には「型」を使用することが、重要である。
確かに、「型」を固持すれと、堅かったり、杓子定規な文章になったりする危険性はある。だが、自分の自分の考えていることを「明確に、分かりやすく表現する」には、一定の「型」を使うことが非常に有効だと考える。
なぜなら、表現された文章は、読む人間が「理解しやすい文章」にすることが重要だからである。
文章は、自分の考えを「伝達」するものである。
試験で行う「小論文」などは、課題の真意を受け止め、課題に対する自分の考えを書くことになる。
試験となると、多数の文章を読む中で、「一目で、書いた者の考えが分かる文章」が、採点対象になるといわれる。
その重要たる「型」の必要性を説き、詳細な「型」の過程、模範の文章が掲載されている。
また、小論文だけでなく、自己推薦書や作文、メールの書き方の「型」まで書かれている。
必然的に文章作成に関わる社会人、受験生は、必見の本である。
さすが筆者自身が、文章作成に関する「塾」を主催するだけの事はある。
思考の「型」をつくる
★★★★★
この本は、日常の生活や仕事の中で、十分に役立ちます。
「自分の考えが相手に正確に伝わらない」「会議で意見を求められるが、切り返せない」といった、
自分自身に対するもどかしさが多少あるはずです。 筆者は、思考の「型」をつくることにより、
自分の頭の中が整理できるようになることを説いています。 メモの型や、質問の型、さらに高度な
反論をはじめ、具体的な事例が示してあります。実に当たり前のことでも、本書に書かれていること
が実践できているかチェックできます。
(例えばメモの型)
・言葉の定義を明確にする 「そもそも 〜とは」
・事象を正確にとらえる 「今、問題となっているのは 〜」
・理由・根拠を明確にする 「なぜ 〜の問題が起きているのか」
・経緯を踏まえる 「かつてはどうだったのか」
・他の事例を参考にする 「他の地域・組織ではどうか」
・どう対策を打つか 「どうすれば改善できるか」
巷には「交渉術」などのハウツー本が溢れていますが、本書の内容で十分にカバーできると思います。
きっと生活や仕事の場での、より深く、円滑なコミュニケーションの構築につながるはずです。
小論文指導のノウハウの奥底に潜む『ホンモノの文章力』とは
★★★★☆
『ホンモノの文章力』という書名にひかれて購入しました。その意味において、「自分を売り込む技術」をまざまざと実践しており成功した新書でしょう。
筆者の樋口裕一氏は「受験小論文指導の神様」と称されており、そのエッセンスが詰め込まれています。大学受験、就職試験で小論文や志望理由書を書く必要に迫られている人達にはとても有用な書籍ですし、実践的なノウハウが多岐にわたり収められていました。例文をあげて、その文章の良い点、悪い点を検証していく作業は、まさしく小論文指導の現場にいるかのような臨場感に満ちたものでした。
とはいうものの『ホンモノの文章力』というタイトルはどうでしょうか。社会人で日々企画書や提案書を書いている者にとってはすでに当たり前の内容ですし、これをマスターしたからと言って「ホンモノの文章力」が身につくというわけでもないでしょうから。
そのあたりは筆者も当然のことながら指摘していました。206頁以降の「書く力こそが思索力だ」という項目に筆者の本音が述べられています。「どうすれば国語力・思索力が養われ、深い教養が身につくのか。」それは「良書を読むことだ。」と結論付けています。その通りでしょう。そして国語力をもっと養うのは「文章を書くという行為だ。」と指摘しています。まさしく同感です。
次の項目では「文章はアイデンティティを拡大する」とも書かれています。この第6章の「文章は現代を救う」という中で展開されている筆者の論理こそ『ホンモノの文章力』につながるわけで、それを分かっていながらノウハウの部分を前半から中盤にかけて拡大したのはやはり購買者の拡大をねらったわけでしょうね。
「生活綴り方」的教育指導法からの脱却
★★★★☆
著者は大分県(1951年)生まれ。大分県立大分上野丘高等学校卒業。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。立教大学大学院文学研究科博士課程満期退学(フランス文学)。09年時点で多摩大学勤務(経営情報学部,教授,08年より)。東進ハイスクール小論文客員講師。白藍塾主宰。京都産業大学客員教授。受験小論文指導における第一人者。本書は著者49歳の時の作品。「著作の総計は100冊を超える」らしい(以上,Wiki)。『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)を出版し,250万部を超えるベストセラー。本書のあとに,「頭がいい人、悪い人の○×」という書名が粗製乱造された(『頭がいいゴルファー悪いゴルファー』,『頭がいい人、悪い人の仕事術』,『頭がいい人、悪い人のパソコンの使い方』,『頭がいい人、悪い人の英語』,『頭がいい人、悪い人の競馬新聞の見方』など)。「頭のいい人の○×」も含めるとかなりの数にのぼる。ただし,著者自身でも同じ題名で何冊もだしているが。
第一章 「文は人なり」にもの申す
第二章 小論文・レポート・投書―意見文の書き方
第三章 自己推薦書・志望理由書の書き方
第四章 作文・エッセイの書き方
第五章 手紙・eメールの書き方
第六章 文章は現代を救う
本書最大の特色は,「『文は人なり』にもの申す」(第一章題名)にも見られるように,従来型の「飾らずに自分の言葉で書け」「ありのままに書け」「すなおに書け」的小論指導に受験小論文指導における第一人者が意義申し立てをしている点であり,同時に,「受験テクニック」の指導に徹している点である。もちろん,著者の真意には,「単なる受験テクニックではない,ホンモノの思考力,ホンモノの文章力をつけ」させる目論見がある(5頁,はじめに)。「書くことの第一の意味は,国語力,そして論理力,分析力や教養を養うこと,つまり知的になること」(206頁),第二の意味は「自分のアイデンティティを拡大すること」(208頁)という著者の主張には,強く同意する。つぎに,本書第二の特徴としては,現代人が文章を書く局面を4つに分類し,章立てしている点にある。受験界の第一人者だが,一般社会人までも読者層の射程に収めようとしているわけだ。
「文は人なり」に対して「文は自己演出なり」(24頁)という命題を対置する過激さを秘める著者だが,その主張は受験業界に身を置く自覚があるだけに正統派だ。もし著者の姿勢を責めるなら,まずは現行の大学受験制度を責めなければならないはずだ。第一人者らしく,作文と小論文との違いにも明確な答えを用意しており(34頁),一般のよくある疑問にも答えている。
本書の目的は,「生活綴り方」(小砂丘忠義,1930年代)的教育指導法からの脱却があるのであって,教育における文章作成指導の吟味・功罪・評価にあるのではないから望蜀の誹りを免れないが,人物評価における作文(小論)の意味に対しての著者の考えが欲しかった。ま,望みすぎですね。(1203字)
著者の実際的な考え方に共感します
★★★★☆
文章に対する著者の実際的な考え方にとても共感します。
読んで損はないと思います。
多くの人は、子供のころに植えつけられた建前に振り回されていて、無用の苦労や損をしていると思います。
この本は文章だけでなく、生き方や物事に対する取り組み方としても参考になるのではないでしょうか?
本の好きな人(私も含めて)は、何かに迷うと、自己啓発本だとか他人の書いた成功談だとか占い本だとかに走ってしまいますが、必要なのは自分の頭の中であれこれと悩んで自分を見失うことではなく、現実的なとりくみを変える事なのではないのか?という気がします。
例文が物足りないと感じたので、星を一つ減らしました。