さて、本書の作文対象は、感想文、エッセイといった散文ではなく、あくまで論説文である。また、試験時に短時間で書く小論文ではなく、ある程度の時間をかけて調査し、執筆することを前提としている。
樋口氏による論説文の組み立ては、
①問題提起 ・・・何を問題として取り上げるかを書く
②意見提示 ・・・それに対する自分の立場、意見を明確にする
③論拠陳述 ・・・自分の意見の根拠を示す
④まとめ
という流れで整理されており、大変わかりやすい。
文章構成については、昔から起承転結とか序論、本論、結論というが、これでは今ひとつピンとこない。そこへいくと樋口氏の説明はとても具体的だ。特に、③自分の意見の根拠を示す、にあたって、いかに説得力のあるネタを集めるか、集めたネタに独自の分析を加えるかついて、紙数を割いて解説している。論文の例題も掲載されていて、理解しやすい。
著者はしかし、論文やレポートを書く力というのは文章力でも構成力でもなく結局のところ知識だ、という。問題領域に関心があり、いろんな意見を見聞していて、さらにデータを持っていれば、おのずと人を唸らせる鋭い論文になる。逆にいえば、いかに文章を書くテクニックに優れていても、知識が不十分では良い論文はかけない。
ということで、本書の主張は、やや逆説的ではあるが、「やさしい文章術」など覚える前にまず本を読め、ということである。受験生の親として、作文の苦手な息子がなんとかならないか、と本書を手に取った私があさはかだった。本嫌いの息子にまずは良書を忍耐強く薦めてみたい。
ちゃんとのっています。この本をきっちり読めば、安心して作成に
とりかかれること間違いなしです。
これらの優れた文章指導書が出版され始めたことは喜ばしい。最近、スポーツ記事が秀逸になっている。山際淳司さんの「江夏の21球」ころ頃からだろうか。Number PLUS Italia のサッカー記事など、内容の素晴らしさに感動している。出版社と編集者にもエールを送りたい。