ジャケは凄いが多重録音の集大成
★★★★★
多重録音3作目にして最高傑作、エレピも交えて
Evansの実験ソロ作品の完成形です。過去2作品
も悪くありませんけど、この作品を聴いてしまうと
霞みますね。オリジナル4曲をこの盤の為に書き下ろして
万全の体制で臨んでいます。曲に合わせてソロ、一人デュオ、
一人トリオと減り張りをつけて、エレピもここぞという時にしか
使用しなかった為、違和感なく効果的で良い感じです。
目立たない作品ですがEvansにしか創る事の出来ない
レベルの高い音楽作品だと思います。
8曲目のEllington作 Reflections In Dが秀逸。
決して「ムード音楽」などではない、計算されつくした驚くべき演奏だ。
★★★★★
ビル・エヴァンスのソロアルバムは、大ヒットしてグラミー賞を受賞した『Alone』を頂点にして、多くの人に聴かれていることと思う。
しかし、その『Alone』にしても多くの人は「ムード音楽」のように聴いているという人が多いようだ。
確かにエヴァンスのソロは耳当たりが良く、ロマンティックな演奏ではあるが、エヴァンスのソロをそういう聴き方でしか捉えていないと、必ず飽きてしまうということが生じる。
私は、エヴァンスのソロアルバムこそ、入門者ではなくて、ジャズに詳しい人向けの作品であると、勝手に思っている。というのも、彼はソロでは必ず熟考の上に、構成もしっかり「音楽理論的」に考えてアルバムを作っているからだ。
本作は1978年の録音で、翌年からはマーク・ジョンソン、ジョン・ラバーベラによる新トリオを結成して1980年9月に亡くなっているから、そいう意味でも時期的に、彼の「音楽理論の集大成」のようなところがあると言っても過言ではない。
フェンダーローズを使用したオーヴァーダブ録音もしているが、それとて主役ではなく、曲に厚みを加えるための処理に過ぎない。
先程いったような「音楽理論の集大成」ということでは、いきなり最初の曲「1:ソング・フォー・ヘレン」でその凄さを見せつける。
エヴァンスは「たった三つの音階」だけでこの曲をスタートする。そしてこの「たった三つの音階」は転調を繰り返され、やがてコードへと発展した後は、文句のつけようのない見事なフィンガリングのアドリブを交えながら最後にはまた「たった三つの音階」へと回帰する。私はこの演奏を聴いた時、思わずうなってしまった。
「たった三つの音階」だけで、「三つの音のフレーズ」だけでソロ演奏を構築してしまうジャズピアニストなど、エヴァンス以外に存在してはいない。
さらに見事なのは、エヴァンスは「左手」の使い方が実に上手いということであろう。彼のソロを聴くと、必ず「左手」は「ちゃんとした仕事」をしていることがわかるだろう。
例えば、チック・コリア、ハービー・ハンコックといった名ピアニストであり、ジャズピアノプレイヤーの巨人もソロアルバムを出しているが、「左手」はけっこう遊んでいる場合が多いのだ。そして、メロディーを奏でる右手は極めて「恣意的」な演奏をして、音を「パラパラ」テクニカルに弾くことで、誤魔化しているかのようにも聞こえる。
よく考えれば、コリアもハンコックもエヴァンスも、あのマイルス・デイビスに招集された経歴を持っている「名ピアニスト中の名ピアニスト」であった。しかし、そういうメンバーと比較しても、エヴァンスの演奏は「指先」で条件反射的に演奏されているのではなく、「脳」で演奏されているといってもいいほどに、「両手」は見事な仕事をしているのだ。
何か、非常に勝手なことを述べてきたが、本作は「流し聴き」するのではなく、「鎮座して」しっかりと聴いて欲しいと思う。
そうでなければ、このアルバムでエヴァンスが行っていることの凄さは、到底理解できないであろう・・・。
エレピの進境著しい
★★★★★
ビル・エヴァンスは既に、VERVE時代に、2枚の「一人多重録音ピアノ・アルバム」を製作している。
しかし、出来は、どちらもいまひとつ、だった。
70年代末、ワーナーに移籍して、まず最初に発表したのが、同企画への三回目のトライだった。それだけ、本フォーマットへのこだわり、というか、やる気と新しいアイデアがあったのだろう。
そして、結果は大成功と出た。
その原因の主要因は、やはり、エレクトリック・ピアノの導入だろう。
音楽には通常、メロディ・リズム・ハーモニーの三要素があるといわれているが、60年代後半以降、それに「トーン(音響的な効果)」が、加わった。
そして、シンセをはじめとする電気鍵盤楽器と、様々なアタッチメント類を付加したエレキ・ギターの進化が、その流れを推進した。
本作で、もし、まったく同じフレーズをアコピだけで弾いて重ねたとしたら、これほどの美しさは具現できなかっただろう。
ビル・エヴァンスといえば、時代の電化の波に乗り遅れた「古くて保守的な人」のような印象をもたれているが、本作を聞くと、彼なりに、エレクトリック・ピアノの可能性と方向性を探っていたのだな、ということが、了解できる。
また、以前の作では、何かトリッキーな効果を狙ってわざわざ三つ目のピアノを足したのではないか、と思わせるような楽曲もあったが、本作の「重ね」には、無駄が感じられない。
全作品の中でも、十指に入る名作だと思う。
Solo Piano
★★★★★
アコーステックピアノ+ローズピアノをオーバーダビングするという手法を駆使して録音したもの。モーダルで華麗なタッチはやはりすばらしい。が、ピークのエバンス(トリオフォーマット時)を上回るものではないようです。Die-hardなファン向けアイテムのように思われます。実験精神はいいと思いますが。 10点中5点
ジャケットがこわい!でも多重シリーズではベストでは?
★★★★☆
いくら、自己との対話でも、こっこっこれは!コワイです。ビルエヴァンスが分離して跳んできそうで。多重録音シリーズでは3作目になりますが、(自己との対話、さらなる自己との対話、そしてこれ)なんか妙に小うるさいだけのように思えた前作に対して、ここへ来てやっとこの企画が的を得たというか。2台のピアノのうち、いままでは2人のエヴァンスがケンカしてるみたいだったのが、一方がエディゴメスやジムホール的になったり、また入れ替わり、きちんとデュオの意義が感じられます。まぁ前作は録音も古く、音が悪いといった難点もあったけれど、この作品はさらにエレクトリックピアノという新しい味わいも加わり、奥行きが増しているのですね。エヴァンスとエレピ、けっして相性が悪くない。かなり天然㡊??使いたいように使ってる感じですが、コロンビアのザアルバムの頃よりずっと使いこなしていると思う。変なジャケットだけど一聴似値しますよ