内容がとても明解で満足のいく作品でした。
清朝建国の名宰相である多爾袞の思考や行動を通して如何に清朝が成立し得たか、また“弁髪”の意義とは何だったのかを分かり易く綴られており、多くの知識を蓄えることのできる読み応えに事欠かない内容でした。

これは太祖ヌルハチの子 睿親王愛新覚羅多爾袞 (Dorgon, 1612-1650) の伝記小説である．彼は異母兄の二代皇帝太宗に仕え，彼の没後次代の幼帝の摂政として太宗の果たせなかった中華への進出を果し，北京を都とする大清帝国の基礎を確定した．作者の着眼点は彼の性格で，はじめは保身のため野心を隠して太宗の手足となり，その後も清朝の安定のために敢えて摂政に甘んじた挙句，自己の存在理由を失ってゆかざるを得ない心のあり方が克明に描かれる．それはまさに有病無福の人のそれであるが，しかし一方新しい王朝が形成される時の激烈な活気の中で生き抜いてゆくには人それぞれに生き方が分かれざるを得ないだろう．この時代の様々な生き方も，勿論この作品のなかに活写されている．とにかく抜群に面白い．大人向きに推薦．

満州で勢力を得た女真族の国、清。その一族を率いて、山海関を越え中国全土制圧をなしとげ大清帝国の礎を築き、３７歳で逝去したドルゴンを描いた佳品。彼の幼少時から筆を解き起こされていて、大帝国の草創期が一人の人物から見通せる史劇のよき小品です。

ただ生きていくことだけでも難しい。
でも、何かを成し遂げないまま生きることもむなしい。
彼は、人生をかけるに値する夢を現実のものにした。
それなのに、なんだか彼がさびしそうなのはなぜなのだろう。

中国史にどこかとっつきにくいものを感じている、特に
女性に読んでほしい本。
時代や国を超えて、人の心の不思議さに思いをはせずにいられない本。