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ブラフマンの埋葬

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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泣きました ★★★★★
小川さんの作品は大好きでたくさん読んでいますが、なぜかこれが一番泣けました。

ブラフマンが「僕」を無心に慕う描写の秀逸な美しさに感嘆しながらも、同時に彼がどのようにして、又誰によって命を落とすのかという複線も早くからしかれていて、ブラフマンへの愛情が増していくのと平行して、すぐに来る別れへの哀しみが抑えようもなく胸に迫りました。

「僕」が哀しいとかショックだとかいう言葉をまったく使わないことが、よけいににブラフマンの喪失を深く感じさせます。「僕」の部屋のあちこちに残ったブラフマンの歯や爪の後、毎晩一緒に眠った記憶などとともに、これから僕」がどうやって暮らしていくのかと思うと、涙が止まりませんでした。周囲の人物の余計な感情も省かれていて、彼らの行動から、その想いがときに残酷なまでに露呈しているだけ、そしてそれでちょうどいい分量なのです。

すぐに読み返す勇気はないですが、大事にしたい本です。ちなみに、ブラフマンがなんであるかは、私はまったく気になりませんでした。描写が増えるたび、水かきやひげをしぐさを勝手に想像して、きっと読者の数だけある、いとしい想像の産物になるのではないでしょうか?
死で彩られた世界 ★★★☆☆
古い農家を改装して作られた「創作者の家」に集まる
芸術家たちと 彼らの世話をする管理人。
北を山に、南を海に、東を川に、西を沼に遮られた
時間が止まってしまったような場所で、
表情のない彼らは、まるで死人のようだ。
村の一番南側にある古代墓地で無造作に転がっている石棺。
埋葬人に引き上げてもらえず、海に流された人々の幽霊。
雑貨屋で買った見知らぬ家族が写っている変色した写真。
碑文彫刻。篠懸の枝に干してある染めたばかりの布。 暴走する車。
死で彩られた世界で、ブラフマン(謎)と名づけられた小動物だけが、
生き生きとして駆け回る。
感情を押し殺して、坦々として語る作者の生と死に対する
静かな思いが、読み終わった後にじわりじわりと押し寄せる。(70点)
冷ややかな肌触りこそが、この作品の魅力 ★★★★★
『博士の愛した数式』で、妙にメジャになった感のある著者だが、そもそもこのひとはもっとマイナな、冷ややかな語り口が特徴の書き手だったはず。そしてこの作品は、そんな私の期待を裏切らない。ブラフマンは確かに愛らしい動物かも知れない。ブラフマンに対する描写にしても、愛情に溢れているようにも思う。だけどやっぱり、このひとの語り口はどこまでも淡々としている。これを凡百の作家の手で描かせたらどうか? 意図的にせよ、意図せずにせよ、まず間違いなく甘さに流されるだろう。それを考えると、この作家の凄さが判るはずだ。自然体で冷淡になる事の出来る書き手だ。私にとって、この作品が著者のベストである。
ブラフマンってなに?と気にしたら負けです 笑 ★★★☆☆
小川さんをはじめて知ったのは、ベタに博士の愛した数式からです 笑。
私の大好きな数学の先生が紹介してくだすったんですけど、なんというか、独特ですよね、この人の描く世界は。
でも、それが作家に求められているものなのでは、と思います。

私はこの人の描く世界が好きです。


この物語は、芸術家が集う創造の家、で働く僕と、ブラフマンの出会いと別れです。
名前が出てくるのは本当にブラフマンだけで、僕も、娘も、他の芸術家、誰一人として名前が出てきません。
ブラフマンが何なのか、についても明言されず、それが少しもどかしかったけれど、作品の味かなとも思います。
物語自体は単調で、たんたんと全てのことが流れていきます。
疲れたときに読む一冊としておすすめです。

結晶 ★★★★☆
なんて圧倒的な孤独なのだろう。

作品の随所から感じる切なさ、哀しさ。頁を進めると共に深まっていく「僕」のブラフマンへの依存。そしてタイトル。

ブラフマンは木の虚が好きだった。覗きこんだその中で何を見たのだろう。

ラストシーンで、「僕」の中には小さな孤独の決勝の様な物ができたように思います。秋の乾いた空気に濃密な悲哀が包み込まれているのに、それでも穏やかさが存在しているのは人間が思い出に縋る生き物だから?


なんて、自分勝手に感傷に浸りすぎでしょうか。でも小説を読む者はそれを勝手に解釈することが許されていますよね。