熱帯雨林に抱くイメージは様々かと思う。植生の豊富さ、多様な動物が生息する熱帯雨林。しかしその熱帯雨林は、意外と土壌が薄く栄養に乏しい。それは高温多湿の環境で有機物の分解が速いことが要因なのだ。さらに、樹高の高い常緑樹の茂る熱帯雨林では林床まで届く光が数%しかなく、背の低い植物にとっては過酷な環境といえる。そのため植物の生存競争は熾烈で、生きるための手段もまた容赦ない場合がある。その例が寄生植物や着生植物である。

この本では「熱帯雨林とは何か」「多様な植物の世界」「種の多様性」「多彩な生物間相互作用」「一斉開花の謎」などについて章ごとに詳しく説明されている。熱帯雨林について知りたい方には入門書として最適。

種子散布の研究者が、現地調査で体験した熱帯雨林をレポートする。大型動物の種子散布の話も面白いが、何より熱帯雨林の奥深さが伝わってくる。生物に興味ある中学・高校生にも読める。