読者が犯人、の意味がわからない人へ。
★★★★★
時折とりだして、適当なページからぱらぱらと流し読みを始める。気がつくと没頭していて結局全部読んでしまう。そんなこんなでもう十回は読んだだろうか。
ミステリ作家/評論家の笠井潔が『虚無への供物』を「起こらなかった殺人事件」をメインテーマに解題してみせたことがあったが、それはおおむね正しい。
『函の中の失楽』のミステリ作家竹本健治が、後に自作を「ミステロイド」(ミステリのようななにか)と定義づけて連作をものしたのは、実作者としていっそう正しい(下品だったけどネ)。
はりぼての日常を、無意味な風景を、陳腐な痴情を、極彩色の万華鏡に変える手法がここには描かれている。
読者は、万華鏡の無意味な色彩の乱舞に意味を見出そうとする。
でも、厚化粧の下の素顔は、どこにでもある、一度見ただけでは忘れてしまうようなありふれた顔。
それを「虚無」と呼ぶ。
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』も、夢野久作『ドグラ・マグラ』も、そしてこの『虚無への供物』も、描かれているのは「大いなる嘘」だ。ただ、半ば無意識だった前ニ作に対し『虚無』は醒めきった眼で、冷徹に、スタイリッシュに嘘を配置した。『虚無』は読者を誘う。嘘を完璧に構築するための共犯者になれと。
これはミステリじゃない。アンチ・ミステリだって、最初からいってるじゃないか。
「虚無」の正体
★★★★★
最初は推理小説として読み始めるが、最後に残る読後感は何とも言えない徒労感と結局はこの話を何も理解できなかった虚無感だ。
読後の強烈な虚無感を読者に提供するための小説だとすれば、まさに「虚無への供物」である。
アンチ・ミステリーの代表作
★☆☆☆☆
氷沼家で起きた連続殺人を、友人たち関係者がああでもない、こうでもないと様々な推理合戦を行う、いわゆるアンチ・ミステリーの代表作。
兄弟たちの名前が蒼司・紅司・藍司で、突然、誰もそんなことを言ってないのに黄司がいるはずだとか言い出したりとか、とにかく話の展開が行き当たりばったりでデタラメなのと(兄弟たちの名前からしてデタラメだ)、700ページ近いこの長さ!
デタラメでつまらなくて長いとくれば、もう最悪。読むのに費やした無駄すぎる時間を返してくれと言いたい。
そもそも本書を読んだきっかけは、有栖川有栖の「月光ゲーム」の中で江神二郎が面白いと言ってたのを読んで、それならと思って読んだのだが、すっかり騙されてしまったよ。
三大奇書……
★★★☆☆
あまり面白くないです。
一番面白いのは、数人の自称探偵が推理比べをするあたりまで。
「人の心」というブラックボックスを使って、あまり納得いかないストーリーを展開した作品だと思いました。
重要に思えたモチーフがあまり生かされず、「人の心」の方へ逃げてしまう。
ミステリのお約束を外した意味で「反推理小説」だとしたら、面白さを求めるのは筋違いなのかもしれません。
純文学にとってのボルヘスのようなものか。
ミステリを五百冊も読んで、あらゆるパターンが頭に入ったマニア向けかも。
「読者自身が犯人」という煽りほどの感動はないと思います。
うーむ・・・
★★★☆☆
恥ずかしながらこの作品の存在を最近まで知らず、
なにぃいいい、「黒死荘」、「ドグマグ」と並ぶ三大奇書・・・・?!
とばかりに慌てて読み出しましたが・・・ストーリーとキャラ設定は面白くって満足しましたがトリックはこんなもんかぁ、という感じでしたね。アンチ・ミステリだそうなので、そもそもトリック云々を議論する方が間違っているのでしょうか?? だとすると他の2作程の規格外的な凄みは感じなかったなぁ。しかし、これだけ評判とっているのだから、私が汲み取りきれていないのかも。もう一回読み直してみます。