歴史もののノンフィクションドキュメンタリーとしてはいいできだが、しっかりとした学習がしたいというのならば、もう少しキチンとした歴史論文を読むべき。
戦間期~ポーランド戦~西方戦役までの歴史を手軽に知っておきたい、というのならば、「電撃戦」というか、ドイツの軍備を中心として、手際よくまとめているし、文庫本で廉価でもあるしお勧めする。
とはいっても、コーネリアス・ライアン(『史上最大の作戦』『遥かなる橋』『ヒトラー最後の戦闘』)を代表とする、小説風の文章とは異なるスタイルがデイトンの持ち味だろう。
論文とも違う…、ノンフィクション小説とも違う…、まさにドキュメンタリーとしか言いようがない。客観的な筆致になるが、学究的な堅苦しさはなく、素人にも読みやすい作品…。
『電撃戦』もそうした作風がいかんなく発揮されている。これを読んだのは、文庫本版が出てすぐのころだ。
正直面白かった。
唯䡊??の成功した電撃戦である1940年のフランス戦(いや、厳密にはそれも失敗なのだが)に至るまでのドイツ軍の発展史、軍事技術、そして、フランス戦役自体の顛末を客観的に記述し、かつ筆致は重苦しくならず、非常に好感の持てる書である。
ただ、いかんせん、知識を蓄積した人にとっては新味が少なく、「よくできた入門書」という評価に留まるかもしれないし、自分もその評価だ。
ただ、電撃戦…それも成功した電撃戦は1940年代のフランス戦役だけだという本書のトーンは、「入門者」には新鮮なものに移るかもしれない。
1940年のフランス戦役を扱い、正味の論文であり、電撃戦という軍事ドクトリンそのものが存在しないと主張する、『電撃戦という幻』(カール=ハインツ・フリーザー著)を併読したいという気分!にさせられる。自分はこちらは未読であり、最近、『電撃戦』を再読して、そういう気分に浸っている。
そんなこともあって、レビューをしたためたのだが、参考になる人がいれば幸いだ。