ロンメルファンは必ず読むべきでは
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私もながらくロンメル将軍のファンで、手に入る日本語の本は大体読んできたと思うのですが、今までで最も興味深く、また読みやすい本だったと言えると思います。
山崎さんの本は、簡潔でバランスが取れている印象がありますが、この本もその例に漏れず、ロンメル将軍に関するかつての邦訳本がともすれば長すぎて分かりにくく、またロンメルへの賞賛が多いのに比べて、抑制が非常に効いて、ロンメル将軍の人間としての限界や弱点に恐れずに踏み込み、そしてそれゆえにロンメル将軍の全体像が今までで始めてはっきり見えてきた様な気さえしました。
「伝説ではない、等身大の、ロンメル将軍へのアプローチ」とでも言いましょうか。
山崎さんには続けて、他の将帥についての伝記もどんどん出していって欲しいと思います。
真実のロンメル
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この本を読んで重大なことを教えられた。自分では理解しているつもりであったが、いわゆる「電撃戦」とは何か。それは心理戦であることである。機甲部隊のスピードや戦車砲や急降下爆撃機による破壊力ではない。敵の心理こそ打撃目標なのだ。大切なことをこの本は教えてくれた。開戦当初のドイツ軍の勝利は敵の心理を打撃しかく乱することからくる。優勢な敵の戦闘力と真っ向から戦わず、敵の混乱状態に可能な限り乗ずることが重要なのだ。物理的な戦いは努めて避ける。激戦となればたとえ勝利しても、国力に限界があるドイツには不利な事態をもたらす。エル・アラメインの敗北はロンメルとDAKの敗北という次元のものではなく、電撃戦あるいはドイツ軍事思想の敗北と言えるのではないか。戦場で敵ほ奔走したロンメルも、自らの最後は思わぬことからもたらされることとなった。全く身に覚えのないヒトラー暗殺への関与から死を宣告され潔くこれに殉じた。胸にしみる最期である。彼を反ヒトラーの英雄として持ち上げようとする、歴史家や物書き、同僚(シュパイデル)たちをあの世でロンメルはどのようにみているのだろうか。彼はWW1から戦間期を含め常にドイツ人の注目の中にあった。そして現在も彼についての議論は軍事史学会のみならず、マニアの間でも絶えることはない。まだ彼の伝説も続いているかの様だ。彼の勝利した戦いのみならず、エル・アラメインからチュニジアへの後退戦闘もいずれ評価される時が来るかも知れない。
山崎氏は参考著書に著名な旧ドイツ軍人の書物をあえて使わなかったという。おそらくカレルの著書だろう。彼の著書には多くの疑問と隠蔽があるためだそうだ。ドイツ軍事史学会においても彼の評価はあまり高くないことを知った。
私もカレルのファンだった。時代の流れを感じる。
最高に面白い。戦史読み物。
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山崎先生の作品は戦史の大局的な流れが確実にわかる。
パウルカレルの『砂漠の狐』と読むと、比較できて面白い。
パウルカレルはロンメルを完全な英雄として描いている
(部下との確執、数々の失敗が描かれてない)
この作品はロンメルの苦悩がわかる。