ギラギラきらめくボンドの音楽。この2ndアルバムでは、前作『ボーン』よりいっそうゴージャス感を強調したお色直しをほどこし、ファンの前に再び姿を現した。弦楽四重奏の編成で「バンド」をやろうとしたのがデビュー盤だったとすれば、今回はミキシングによって4人の合奏を20人ぐらいのストリングセクションが演奏しているかのように細工、それを打ち込み中心のバックと一体化させ、全体としてエレクトリックなオーケストラのようなサウンドになっている。
   クラシック音楽の訓練をしっかり受けた彼女たちにとって、ボロディンやアルビノーニの名曲をリメイクしたトラックは安心できる出発点だが、そこにとどまっていては新味に欠けるのも確か。そこで、レッド・ツェッペリンの「カシミール」を取り上げてみたり、あるいはメンバーの自作を入れてみたりと、レパートリーに幅を持たせる努力をしている。その中で注目されるのは、クロアチアの作曲家トンチ・ハルジックのオリジナルが2曲入っていること。「フェーゴ」「ジプシー・ラプソディ」は、いずれも東欧の雰囲気を漂わせた面白いナンバーだ。また、これ以外にも、シタールやタブラなどの民族楽器が使用された曲がある。そして、そこかしこにアラブ的なストリングスの使い方が目につく。もしかしたら、彼女たちは「クラシック界のスパイス・ガールズ」ではなく、「クラシック界のシャキーラ」になっていくのかもしれない。（松本泰樹）